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第26話 R・L

 アッシュがルーシャの屋敷に来てから、五日が経った。この間、鎧殻巨類も鎧殻巨人も現れていない。


「いやぁ、暇だなルーシャ。この島なんか娯楽ねぇの?」


 アッシュは屋敷の応接間でメリサの出したクッキーを貪り食いながら言う。


「あなた、自分の立場分かってる!?」


 ルーシャはそんなアッシュの呑気な態度に苛立つ。


「分かってるけど、退屈はどうにもならないんだよな…… ここ数日島を色々見て回ったが、貧しい奴らばっかでさ……みんな何が楽しくて生きてんだろうな……」

「余計なお世話よ。それもこれも共和国がこの島から搾取するせいないんだから!」


 ルーシャは語気を強める。しかし、アッシュはまるで気にしていないようだった。


「ルーシャは魔術師になったんだろ? ならさっさとこんな島出て共和国で楽しく暮らせばいいじゃねえの?」

「なっ。故郷を見捨てられるわけないじゃない。悪魔にそそのかされて私たちを殺しにきたあなたにはわからないのよ」

「……わかんねぇな。俺は他の誰かのために何かする奴の気持ちがまったくわかんねぇ」

「あなたとは、話しても無駄ね……」


 ルーシャが自分の部屋に行こうとしたその時だった。鎧殻巨類の気配を感じ、立ち止まる。


「来たな…… 退屈が少しは紛らわせそうだ」


 そう言って、アッシュも立ち上がる。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 クオセル、ルーシャ、アッシュはそれぞれの駆動巨人に乗り込み、目的地である砂丘地帯を目指す。


「しかし、鎧殻巨類は砂丘地帯によく出るね…… アッシュ、ローグからなんか聞いている?」

「さあな。そのあたりの地下に鎧殻巨類の巣でもあんじゃねぇの?」


 そうこう話しているうちに、ダンゴムシのような姿をした黒い鎧殻巨類の群れが姿を現す。その数は十二体で、体長は六バーザ(約十八メートル)とかなりのサイズだった。


「ヴォルガーだね。堅い鎧殻を持つのが特徴だよ」


 その姿をみたクオセルが説明する。


「よし、仲間になった記念に、俺が一人で片付けてやるよ」

「ちょっと、誰が仲間よ」

 

 アッシュの言葉にルーシャは反発する。しかし、アッシュはR(レッド)L(ランス)とシンクロシステムで一体となり、右手にランス(円錐の形状をした槍)型の波動武装を装備する。


「んじゃ、倒してくるぜ!」


 そう言って、玖狼とΣの前に躍り出ると、勢いよくヴォルガ―に向かって行く。


「もう!」

「ルーシャ、彼の実力をよく見ておこうよ」

「……わかったわよ。クオがそう言うなら……」


 R・Lは群れの先頭にいるヴォルガ―に近づくと、手にしたランスを突き刺す。すると、ヴォルガ―の身体から緑色の光が漏れ出し、次の瞬間にはその肉体がはじけ飛んだ。


「はは、どうだ!」


 機体に肉片を浴びながら、R・Lは上空に浮遊する。そして、手にしたランスの先端に緑のエネルギーの球体が出現させたかと思うと、それは瞬く間にねじれて螺旋状の閃光になり、地上のヴォルガ―に向かって直進する。緑色の閃光が激突し、鎧殻を易々と貫いた。


 残ったヴォルガ―も口から黒い光弾を吐き出したが、R・Lは身体に円形のシールドを展開し、その攻撃を防いだ。


「その程度の攻撃、R・Lにゃ効かねえよ!」


 そう言って、上空から、残りのヴォルガ―を狙い撃つ。


「キシャァァァァァ!」


 一匹、また一匹と緑の閃光に撃ち抜かれたヴォルガ―が葬られていく。


「他愛ねぇ」


 R・Lが一方的な殺戮を終えたその時だった。砂埃を巻き上げ、白いヴォルガ―が姿を現す。それは、今まで戦っていたヴォルガ―の倍以上の体躯であった。


「あんなサイズの鎧殻巨類、見たことないぞ……」


 クオセルは驚く。鎧殻巨類の最大サイズは六バーザ(約十八メートル)だからだ。


「異常進化か、はたまたローグの奴か改造したか…… 関係ねぇ、倒すだけだ!」


 アッシュはどちらでも良さそうに笑うと、ランスから光弾を放つ。しかし、白いヴォルガーの鎧殻は強固で、光弾は弾かれる。


「何ッ!?」


 そのまま、白いヴォルガ―はR・L目掛けて、口から粒子の奔流を放出する。


「ちっ!」


 さすがにシールドでも防ぎきれないと思い、R・Lは回避を選択する。


「もう、駄目じゃない! 手を貸しましょうか?」


 ルーシャはΣの腹部キャノン砲なら通用すると思い、助力を申し出る。


「いやいや、一人で十分だ」


 ルーシャの申し出をアッシュは断ると、ランスに今まで以上に巨大な球体状のエネルギーを集める。


「チャージしたランスの攻撃なら、あいつの身体を貫けるはずさ」


 緑の球体が機体ほどの大きさになったとき、R・Lはそれを螺旋状の巨大な閃光として、放出する。


 もの凄い速度で放出された閃光は、白いヴォルガ―に直撃する。その威力たるや、敵の鎧殻を跡形もなく焼き尽くし、欠片さえ残さなかった。


「どうだ? 俺もなかなかやるだろう?」


 アッシュは得意げにそう言った。

 

「なあ、ルーシャ。俺は俺のためにしか生きれない。でも、俺のために全力で戦う。それなら文句ないよな?」

「はぁ、まあいいわ。あなた、強そうだし、戦力としては頼りにしてる」

「おう、任せとけ!」


 R・Lの中で、アッシュは力強く宣言する。

 

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