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第20話 新型

 玖狼は海上で鎧殻巨人と戦闘をしていた。


 その鎧殻巨人は純白で、厚い鎧殻に覆われ、頭部は蟹のような眼柄がんぺいがある。右手の身巨大なはさみを備え、左手には切先が二股に分かれた剣を手にしていた。      


 鋏から緑の光弾を発し、左手の剣で玖狼のメッサーに応戦する。


(こいつ…… 強い)


 今まで戦ってきた鎧殻巨人の中でも、頭一つ抜けて高い戦闘力を持っていた。


『どうした、セルド島の駆動巨人とはそんなものか!』


 鎧殻巨人は嘲笑うように言うと、さらなる攻撃を続ける。


「ちっ!」


 玖狼は距離を取りながら、対重装甲小銃を放つが、すべて避けられる。そして、隙を見計らい、鎧殻巨人はメッサーを持った玖狼の右腕を切断した。


「しまった!」


 シンクロシステムでクオセルと玖狼は一体化しているが、痛みに関しては伝達しない。ただ、右腕が損失したという情報だけが、クオセルの脳に伝わる。


『終わりだ!』


 鎧殻巨人はとどめとばかりに二股の剣を振り下ろす。


「させないよ!」


 玖狼はそれをなんとか回避し、左手の対重装甲小銃で剣を持つ鎧殻巨人の左腕を撃ち抜き、肘から先を破損させる。


 お互い、近接武器を持つ腕を無くし、あとは光弾の打ち合いとなった……


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「まったく、アグスに聞いたら、修理に一週間かかるって」


 クオセルはルーシャの屋敷でため息をつく。戦闘に辛くも勝利したものの、玖狼の損傷は激しかった。今回の戦いで、玖狼は右腕を失っただけでなく、至るところ故障し、修理しなければならなかった。


「代わりの機体とパイロットを共和国は派遣してくれないの?」

「さっき総督府に聞いたら、修理費に関しては共和国が出してくれるようだけど、別の駆動巨人の派遣は無理だって。この間に敵が来たら厄介だね……」

「なら、私が新型の駆動巨人を悪魔から手に入れてくるわ。魔術師になった私なら、悪魔の世界に行けるわけだし」


 クオセルの言葉を受けて、ルーシャはそう申し出た。


「お父さんも私が駆動巨人のパイロットになることに納得してくれたし、いいわよねクオ?」


 ルーシャが魔術師になってから、父フルドとは散々議論をした。その結果、しぶしぶではあるが、パイロットになることを了承してもらっていた。


「初心者の君一人が戦うのは危険すぎる……」

「でも、修理が終わる前に敵が来たら島に被害がでる。それは嫌」

「……まあ、そうだけど」

「やっぱり駆動巨人は必要よね…… とりあえず、一緒にアグニという悪魔の許に行きましょう」


 ルーシャの熱意に押され、クオセルは彼女を連れてアグニの許に再び行くことにした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 「……ここが、悪魔の世界」


 魔術陣を通り、巨大な真っ白の空間にクオセルとルーシャは来ていた。


「ほんと、頭がおかしくなりそうだよね」

「はは、確かにね」


 やはり悪魔の世界だけあって、なにか現実離れした空間だった。


「……やれやれ、失礼な物言いだな」


 しばらくして、黒いローブを纏い、黒い仮面をつけた『悪魔』が姿を現す。


「あなたが、アグス……」

「ああそうだルーシャ・エルネス。君も駆動巨人が欲しいのだろう?」


 悪魔はアグスは仮面から赤く光る眼で、彼女をまっすぐ見つめる。


「ええ、私でも動かせる駆動巨人はあるかしら?」

「見たところ、君は武器術・格闘術の類はやっていなさそうだ…… そうなると、火力重視の機体がいいだろう。君は高い魔力量を持っているし、この新型なんてどうかな?」


 アグスがそう言うと、部屋の何もない空間から、灰色の機体が突如現れる。大きさは玖狼と同程度で、頭部に透明なバイザーがあり、肩には鋭角の三角型の装甲が備え付けられていた。

 腹部にも窪みがあり、その中心部は円形の砲口が見える。


「へー、これが新型なの?」


 クオセルは興味深そうに機体を眺める。


「ああ、塗装前だがな。接近戦は不得意だが、火力なら君の玖狼をはるかに凌駕する。なんせ機体の至るところに火器が備え付けられていて、死角がない。まあ、対価は玖狼の倍ほどだが、払えるか?」

「そこは共和国が全部出してくれるから心配いらないよ」

「ほう、共和国も最近は気前がいい」


 アグスは仮面の下で、愉快そうに笑う。


「……凄い機体ですね。乗ってみてもいいですか?」

「うむ、構わんよ」


 ルーシャは浮遊魔術で胸部のコックピットまで至ると、そこに手を振れる。すると、ゆっくりとコックピットのハッチが開き、彼女は機体の中に入る。


「えーと、まずどうすれば」

「そうだな、今日は暇だし、私とクオセルで一から教えてあげよう」

「ま、あんたに戦闘で死なれたら目覚めが悪いしね。ちゃんと乗りこなせるまでしごいてやるよ」


 こうして、二人の指導を受け、機体の動かし方から、武器の使い方まで、ルーシャは一通りマスターしたのであった。

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