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第15話 銃撃

 クオセルは玖狼とシンクロ・システムで一体化しつつ、空中で鎧殻巨人と戦っていた。

 

 今回の鎧殻巨人は黒い鎧殻に覆われ、頭部にはカブトムシのような角があった。また、背には一対の羽が存在し、右手にはモーニングスター(複数の棘の付いた棍棒)を持っている。


 巨躯のわりに俊敏で、玖狼の対重装甲小銃を巧みに避けつつ、口から緑の光弾を放ち反撃してくる。


 クオセルはこのままでは埒が明かないと左手に対重装甲小銃を持ったまま、右手にメッサーを生成すると、光弾を掻い潜り接近戦を仕掛ける。


 メッサーとモーニングスターがぶつかり、火花が飛ぶ。しかし、パワーでは鎧殻巨人が上のようで、玖狼は押し込まれる。


『力ではこの俺に勝てんよ』


 鎧殻巨人が低い声でそう言いながら、モーニングスターを振るう。この鎧殻巨人も人語を話すことが出来るようだ。

 

「あんたら鎧殻巨人ってのは何者だ? どっから来た?」

『答えは自分で見つけることだな……』


 クオセルの問いにそう返し、攻撃を続ける。それをなんとかメッサーで防御しつつ、隙を伺う。


(たしかに力は強い。ただ、攻撃パターンは単調だ……)


 玖狼は頭部を狙ってきた一撃を回避すると、逆に鎧殻巨人の角をメッサーで叩き斬る。


『……ほうやるな! では、これならどうだ!』


 鎧殻巨人は左手にもモーニングスターを生成する。


(……駆動巨人と同じく、武器を作り出した!?)


 鎧殻巨人は左右のモーニングスターを振り回す。その連続攻撃の前に、玖狼は防戦に回る。


 さらに、近づきすぎると、口から光弾も放ってくるため、一定の距離をとらねばならない。


 クオセルは近接戦を諦め、再び距離をとる。そして、対重装甲小銃を放つが、やはり避けられた。


 玖狼はメッサーを片手用銃剣に切り替え、さらに銃撃を加える。


『その銃剣では威力不足だぞ』


 鎧殻巨人は嘲笑う。


 しかし、片手用銃剣の銃撃の速度は速く、連射も容易だった。玖狼は対重装甲小銃で鎧殻巨人の本体を狙いつつ、相手が避けたところを片手用銃剣で羽を狙い撃つ。


『何っ!』


 右の羽を撃ち抜かれ、バランスを崩した瞬間、対重装甲小銃が鎧殻巨人を狙う。


『ちぃっ!』


 鎧殻巨人は閃光をなんとか避けたが、左の羽を撃ち抜かれる。それでも駆動巨人におけるコアのような重力操作の部位があるのか、空中で体勢を立て直す。


 しかし、羽を失い、以前のように素早くは飛行できないようだった。


 玖狼は冷静に対重装甲小銃の引き金を引く。何発か避けられたものの、結局青い閃光は鎧殻巨人の胸を撃ち抜いた。


 敵は断末魔を発する間もなく、地面に落下していく。そして、地面激突した次の瞬間には、その死骸は鎧殻巨類と同じく炎上する。


「……今回も何もわからないままだったな……」


 クオセルはため息をつく。 


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「はい、リンゴ」


 屋敷に帰ってきたクオセルはルーシャに市場で買ってきた袋入りのリンゴを手渡す。


「……どうしたの?」 

 

 袋を受け取りながら、ルーシャは怪訝そうな顔で聞く。


「昨日、少し言い過ぎたからね。そのお詫び」

「別にもう気にしてないわよ。でも、なんでリンゴなの?」

「昔、師匠にリンゴ買ってきてもらって嬉しかった記憶があるから……」


 クオセルは少し照れ臭そうに言う。ルーシャはその様子がなんだかおかしくなった。


「ふふ、分かった。ありがとう。あとで皆で食べましょう」

「……そうだね」

「ねえ、クオの師匠ってどんな人なの?」


 その問いにクオセルは少し考えこんでいる様子だった。


「どんな人、か…… 私生活はわりとずぼらでいいかげんな人だったよ」

「あら、クオみたいね……」

「あの人に比べたら俺なんてまだマシなほうだよ。ほんと身勝手な魔女だった」

「へー、女の人だったんだ」 

「そ、まぁ、魔術の師匠としてはかなり厳しかったけどね……」


 クオセルは、師匠に魔術を教わった日々のことを思い返していた。


「ねえ、クオ。私が島を守りたいって思いは本気よ。だから、もっと私にも厳しく指導してほしいの」


 ルーシャは真剣な眼差しをクオセルに向ける。


「……俺は誰かに教えるのは向いていないよ……」

「そう? 私はクオが来てからだいぶ魔術が上達したわ」

「それはあんたの頑張りなんじゃない?」

「いいえ、あなたの指導があったからよ。だけど、まだ足りないの。私をもっと強くしてほしい」


 そう言って彼女は頭を下げる。


「……やれやれ。頭をあげてよ」

「じゃあ、OK?」

「仕方ないなぁ。もう少しだけ真剣に魔術について教えてあげる」

「やった! ありがとねクオ」


 ルーシャは満面の笑みを浮かべるのだった。

 

 

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