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第13話 悪魔

「これで悪魔の世界にいけるの?」


 屋敷の庭にクオセルが魔術陣を描いているのを見て、ルーシャは聞く。


「そ、便利でしょ?」


 描き終わった魔術陣は、クオセルが呪文を唱えると、眩い光を放つ。


「まあ、そういうわけで、行ってくる」

「ちょっと!」


 ルーシャの言葉も聞かず、クオセルは輝く魔術陣の上に乗る。すると、彼の身体は魔術陣に吸い込まれていき、悪魔の世界に旅立っていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 魔術陣に吸い込まれたクオセルは、次の瞬間には広い空間に立っていた。


 正面、後方、左右、天井、地面、四方八方の白い壁以外なにもない異質な場所に。


 来るのは二回目だが、何も無くて気が狂いそうな場所である。


「来たか、クオセル……」


 しばらく時間が経った後、クオセルが振り返ると、黒いフード付きローブを纏い、黒い仮面をつけた『悪魔』が後ろに立っていた。


「やあ、久しぶりアグス」


 クオセルは悪魔に声をかける。彼は駆動巨人とその武器に関する契約を担当する悪魔アグスである。


「……要件は強力な火器が欲しいということだったな」


 悪魔アグスは威厳のある声でそう言った。


「そう。片手用銃剣だと威力不足だし、キャノンだと発射までに時間がかかる上に一度使うと一週間ほど使えない…… 通常の鎧殻巨類相手ならそれでも良かったんだけど、鎧殻巨人なんてのも出てきた。あんたは鎧殻巨人について何か知らない?」

無料タダで悪魔から情報を引き出せると思わんことだ…… 情報が欲しければ相応の対価を払え……」

「やっぱりそうなるか…… どれくら?」


 アグスは考え込む。


「そうだな…… お前が持っている駆動巨人一機分ぐらいの対価がいる……」

「そんなに? ずいぶんと高い情報なんだね……」

「ああ、払えなければ自分で調べることだ……」


 クオセルはため息をつくと、この話題を止めて、火器の話に入ることにする。


「じゃあ、あの鎧殻巨人の鎧殻を貫けて、連射性もそれなりに良い、便利な火器は無いかな?」

「あるぞ…… まあ、かなり値は張るがな。払えるか?」

「武器の対価は事前に交渉して、共和国が払ってくれることになったから、たぶん大丈夫だよ」


 総督府を通して共和国に頼んだら、この件に関してはすんなり了承してもらえた。あまりにもすんなり行き過ぎて、後で色々面倒ごとを押し付けられる気なのかと思ったが、すでにだいぶ面倒な仕事をやっているから、その対価だろうとクオセルは自分を納得させた。


「……そうか。片手でも扱える取り回しのよさに加え、威力の高い銃がある。対重装甲小銃というものだ。重装駆動巨人にも効果のあるコイツなら、鎧殻巨人をも射貫くだろう」

「へー、そんなんがあるんだ」

「ああ、通常の射撃モードで効かなかったら、エネルギーを短時間チャージするとさらに強力な攻撃が出来る。キャノン程の火力はないが、充分だろう」

「効かなかったら返品できる?」


 クオセルはダメ元で一応聞いてみる。


「返品は出来んが、そもそも駆動巨人はパイロットの魔力が強くなったり、戦闘の中で経験を積むとおのずと強化されたりもする。お前の玖狼もいずれさらなる進化をするであろう。現状、お前が扱える火器でこれ以上のものはない」

「わかった。じゃあ、それを玖狼に備え付けてくれる?」

「対価についてはこれぐらいだ……」


 そう言って、アグスは銃の取り扱いと対価が書かれた資料を手渡す。対価として必要な大量の金と宝石について書かれていた。


「うーん、やっぱり高いね。まあ、共和国が出してくれるというのだから、後で送っとくよ」

「ああ、よろしく頼む」

「じゃあ、そろそろ帰ろうと思うんだ」

「わかった。転送させる」


 アグスが指を鳴らすと、次の瞬間にはクオセルは庭の魔術陣の上に立っていた。


「交渉は上手くいった?」


 庭で帰りを待っていたルーシャが尋ねる。


「ああ、それなりの銃が手に入ったよ」

「そう、それは良かった…… 私も早く悪魔を呼び出せる魔術師になりたいわ。あと、駆動巨人も欲しいし」

「魔術師になっても別に悪魔と契約する必要はないし、パイロットになることも強制されない…… 君が魔術師になりたいのは聞いていたけど、パイロットもやりたいの?」


 ルーシャは少し考えこんでいる様子だった。


「別に戦わずにすむならそれが一番だけど、故郷を襲う鎧殻巨類を野放しにしておけないわ。私も駆動巨人を手に入れて、クオと一緒に戦いたい」

「……そうなんだ。でも、危険だよ親父さんはなんて言うか……」

「父は私の意思を尊重してくれると思う。まあ、先のことは魔術師になれたら考えるわ」

「……」


 駆動巨人の乗れる味方が欲しいとは思っているクオセルだったが、彼女がパイロットになるのは、色々と複雑でもあった。

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