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第10話 鎧殻巨人

「……またか」


 鎧殻巨類の反応を感じて、クオセルは玖狼に乗り込む。敵は海から来たようで、場所はまだ沿岸付近だ。


(町に近づく前に仕留める)


 そう思い、シンクロシステムを作動させ、玖狼と一体となり、現場に急ぐ。


 しばらくすると、沿岸沿いの砂丘地帯に、巨大なはさみを持つ、青いロブスターのよう鎧殻巨類の姿が見えてきた。名前はロベック。鋏から光弾を出すという厄介な奴だ。

 

 ロベックは頭上に玖狼の姿を捉えると、鋏を広げ、そこから二つの光弾を放ってきた。


 玖狼は空中でそれを避けると、メッサーを手に地上に降り立つ。


 そのままスラスターを吹かしつつ、ジグザグに進んで相手を翻弄しつつ、ロベックに近づく。


 横腹からメッサーで脚を刈ろうとしたが、敵は巨体のわりに身軽で、攻撃を避けると巨大な鋏を叩きつけてきた。


「ぐっ!」


 かなりの衝撃を機体に受け、玖狼は後方に吹き飛ぶ。


 機体の装甲は強固なのでダメージは大したことないが、コックピットのクオセルにはかなりの衝撃が来た。


(俺としたことが、しくじった……)


 スラスターを吹かせて体勢を立て直すと、ロベックが放つ光弾を避ける。


(まずあの鋏をなんとかするか……)


 そう思い、 迫りくる光弾を躱しつつ正面に近づく。ロベックが再び鋏を叩きつけてくるのを奴の右脇に避けながら、片手でメッサーを薙ぐ。鋭い一撃が鋏のついたロベックの右腕を刈る。


「キシャァァァァァ」


 ロベックは叫ぶが、玖狼はそのまま右脇からメッサーで顔を一突きする。高波動を纏った刃が鎧殻を突き破り、青い血を噴き出しながらロベックは絶命する


「ふぅ……」


 ロベックの死骸が燃えたのを確認しつつ、帰ろうとした時だった。海から、別の巨躯が姿を現す。そして、ゆっくりと浮遊し、地面に降り立つ。


「……なんだ……アレ?」


 それは見たことのない鎧殻巨類だった。全身に赤い甲殻類のようなごつごつした鎧殻を纏っているが、そのシルエットは駆動巨人と同じく人型で、二本の足でしっかりと大地を踏みしめていた。


 さらに頭部はザリガニのような造形で、額からは触角がついており、まるで、ザリガニの殻を纏った巨人というような姿だった。

 

 さらに身体の首、腕、脚、腰などには生物的な青い管が駆動巨人の動力チューブのように備え付けられていた。

 

 また、驚くべきことに、その手には身体の鎧殻と同じような色合いの両刃の剣が握られている。


(……人型の鎧殻巨類。そんなの、見たことも聞いたこともないぞ……)


 異形の鎧殻巨類の登場に戸惑いながらも、玖狼は両手でメッサーを構える。


 人型鎧殻巨類は二本の足で、ゆっくりと玖狼に近づくと、手にした剣を振り上げてきた。


「くっ!」


 剣とメッサーがぶつかる。ただ、人型鎧殻巨類は攻撃が防がれると手首を返して、剣の表の刃だけでなく、裏刃も使い、第二撃を繰り出してきた。


(武器を使う奴でさえ初めてだっていうのに、こいつ……剣術みたいな動きをする)


 その攻撃も防御した玖狼は人型鎧殻巨類と激しい武器の打ち合いをする。相手の剣にも超高波動が流れているのか、刃の部分が振動しているように感じる。


 クオセルは幼少期から剣術を習っていたのでわかるが、相手はかなりの使い手だった。表の刃と裏刃を巧みに切り替え、連続攻撃を行ってくる。

 

「この!」


 玖狼も負けじと剣の攻撃を上手く受け流すと、反撃を行う。まるで巨人同士の剣術の応酬のようになっていた。


 しばらく近接戦が続いた後、人型鎧殻巨類は片手で長剣を一閃させると、玖狼から距離をとる。そして、なんとその巨体を宙に浮かせたのだった。


「何っ!? 飛行も出来るのか」


 クオセルが驚いていると、人型鎧殻巨類は甲殻類のような口部を開き、そこから青い光弾を繰り出してきた。


 玖狼もスラスターを吹かせ、上空に逃避し、光弾を避ける。


 そのまま、メッサーを手に空中で相手と距離を詰め、斬りかかる。空中でも激しい刃のぶつかり合いとなる。


 力も剣の技量もほぼ互角だった。これではまるで鎧殻巨類ではなく、駆動巨人を相手しているみたいだった。


(埒が明かない。せこい手を使うか……) 


 戦闘のさなか、玖狼は左手に片手用銃剣を生成し、敵の攻撃を右手のメッサーで受ける。そして、その隙に銃剣の刃を突きつける。


 人型鎧殻巨類はその攻撃を後方に下がって避けようとしたものの回避しきれず、肩の装甲に傷が出来、青い体液が噴き出る。



『ほう……やるではないか』



 その時だった。鎧殻巨類から人間のような声が聞こえた。


「……何!?」

 

『これが共和国の駆動巨人の力か……』

「あんた、喋れるのか……」


 クオセルも脳内で命じて、玖狼をスピーカーモードに切り替える。


『我々は鎧殻巨人がいかくきょじん…… 下等な鎧殻巨類がいかくきょるいとは違うのだ……』

「鎧殻巨人…… あんたはいったい……」

『ふふ、無駄話をした…… 今日は軽い手合わせのつもりで来たのだ…… では、また会おう……』


 そう言うと、人型鎧殻巨類――否、鎧殻巨人は踵を返し、凄まじい速度で飛行していった。


「ま、待て!」


 玖狼も追おうとしたが、鎧殻巨人はそのまま海の中に消えていく。


 鎧殻巨人という、二足歩行をし、武器を扱い、おまけに人語も喋る異形の存在を前にして、クオセルはただ茫然と海を見つめることしか出来なかった。


 

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