89:ベリル、突然何を言っている⁉
「拓海、私と一緒に来い。父上とオンラインで話す」
ベリルはいつの間にか着替えている。
裾が広がる、真っ白な長袖ロングワンピース姿だった。
丸首に開いた襟元には、フワフワの白い毛が背中の方までぐるりと飾り付けられている。同じように左右の袖口と、裾にもフワフワの白い毛で飾られていた。
雪のような白さと、バストのラインがくっきり出たそのドレスに、心臓がドキドキし始める。
そんな俺の手を掴むと、ベリルは部屋を出た。
「ベリル、俺、寝間着だけど、いいのか?」
「構わんさ。どうせオンラインなんだから」
ベリルと俺の後に三騎士が続いたが、ベリルの部屋に着くと、三人はそのまま廊下に残った。
「え、三人は?」
後ろを振り返ると……。
「父上と話すからな。外で待機だ」
ベリルは執務室として使っているらしい部屋に、そのまま進んだ。
すでにパソコンは起動されていて、俺をそばに立たせると、ベリルはすぐにオンラインシステムでロードクロサイトを呼び出す。
呼び出し音が響く中、スピエルの指摘を思い出した。
「ベリル、俺、ネックレスが」
「静かに」
ロードクロサイトの姿が画面に現れる。
寝間着の上に深紅の厚手のガウン。
良かった。
自分だけ寝間着だったらって思ったけど、大丈夫そうだ。
「ベリルか。どうした」
落ち着いた様子でロードクロサイトが尋ねる。
「父上にいくつか報告があります」
「……報告。それは吉報であるか、ベリル?」
「もちろんです」
「では聞こうか」
ロードクロサイトは机の上に両肘を置くと、両手を組み、そこに自身の顎を載せた。
「まず、拓海をさらった『ザイド』の一味を捕らえました」
「⁉ 本当か、ベリル? ウルフ王国に逃亡したと思っていたのだが……」
「いえ、ブラッド国に潜伏していたので、泳がしておきました」
「ほう……」
「この別荘への潜入計画を立てていたので、ひとまず騙されたフリをしました」
⁉ 騙されたフリ⁉
ロードクロサイトは眉をくいっとあげたが、そのまま黙っている。
「拓海をさらったその後を追い、捕えました」
「拓海を囮にしたわけか」
「囮、というか、『ザイド』を手中に収めるのに拓海は大いに活躍してくれました」
「活躍……?」
ロードクロサイトが身を乗り出す。
「父上、私は体裁のために、クレメンスと婚約者しますが、彼とは結婚しません」
「な、ベリル、突然何を言っている⁉」
「婚約者候補を集め、ホリデーシーズンをつぶし、婚約者が決まらなかった、ではレッド家としてメンツが潰れますよね? ですからクレメンスとの婚約発表を、落としどころにします。でも結婚をするつもりはありません」
「ベリル、待て、そなた……」
「まずクレメンスとの婚約を発表し、その後、私は帝王学を学ぶため、旅に出ます。そしてその旅から戻ったら、クレメンスとの婚約を解消し、レッド家の次期当主の座から退くつもりです」
「ベリル!」
ロードクロサイトが立ち上がったが、ベリルは話し続けた。







