8:白衣の巨乳美女
チクッとした痛みに目を開けると……。
「あら、起こしちゃった? ごめんなさいね。そのまま動かないでね」
声の方を見ると、赤茶色の髪を後ろでお団子状にまとめ、胸元の開いた赤紫のドレスの上に白衣を着た、巨乳の女性が俺の左腕から採血をしていた。
さっき部屋に入ってきた二人の女性のうちの一人だった。
紅いフレームの眼鏡の下には、髪と同じ赤茶色の瞳。
鼻は高く、紅くぽってりとした唇がなまめかしい。
白衣からのぞく深い谷間はとても刺激的だ。
まるで動画サイトで見たセクシーな女医さんみたいだ……。
「ありがとう。これでよしと」
そう言うとセクシーな女医さんは針を刺していた場所を指で押さえた。
爪には真っ赤なネイル。
「このまま押さえてくれる?」
「あ、はい」
俺は頷き、正方形の小型の絆創膏を指で押さえた。
「拓海くん、初めまして。私はベリル様の執事兼医者のスピネルよ。あなたはこのレッド家での滞在が認められたわけだけど、それはあなたがとても特殊な血の持ち主だからよ。あなたの血がポリアース国の人間の血と何が違うのか、私が調べることになったの。だからあなたの血を少々いただいたわ」
セクシーな女医さんはベリルの執事でもあるのか……。
執事と言えば、男性のイメージが強いけど、女性もいるんだな……。
「拓海くん、不思議そうな顔をしているわね」
「あ、はい。その俺がいた世界では執事と言えば男性のイメージが強くて。ただ、俺は執事がいる国の生まれではないので、女性の執事というのも普通にいるのかもしれませんが……」
スピネルは注射器などを片付けながら口を開いた。
「こちらの世界でも執事は男性が多いわよ。でもベリル様は女性だから。しかもレッド家の次期当主。夫となる男以外と過ちがあってはならない。だからベリル様の周囲には第三騎士のキャノス以外、男性はいないのよ」
「キャノスって……さっき部屋に入ってきた金髪碧眼の騎士ですか?」
「そうよ。彼がベリル様のそばにいられるのは、ヴァンパイアなんだけど、魔法使いでもあるからなの。魔法使いは魔法を使えるから、部下にもてるメリットはとても大きい。
でもね、魔法使いってクセがあるし、プライドも高いから、誰かに仕えるなんてほとんどないのよ。他の種族、ヴァンパイアやライカンスロープはもちろん、死者すら恐れない。
まあ人間に至ってはあまりにも無力だからそもそも相手にしない、みたいな感じでね。でもキャノスはヴァンパイアと魔法使いの間に生まれたから、他の魔法使いとは違う。
それにベリル様に仕えるにあたり、自身にベリル様との交わりを禁止する魔法をかけているの。だから騎士としておそばに仕えることができているのよ」
スピネルはキャノスについての説明を終えると、カバンからノートパソコンのようなものを取り出した。
「キャノスの件は以上よ。拓海くんは、自分がいた世界では執事と言えば男性というイメージ、と言っていたわよね。拓海くんがいた世界がどんなところか教えてもらえる?」
「分かりました」