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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】死亡フラグ遂行寸前編

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67:どんなに想っても叶わない

ランチパーティーは、気づけば終わっていた。


婚約者候補達の動きも、ただ眺めているだけで、頭には全然入ってきていない。


しかも、焼きそばもお好み焼きもたこ焼きも、しっかり食べていたようなのだが……。


それを食べていたこともほとんど記憶になかった。


「拓海、どうしました? ランチパーティーからずっと、心ここにあらずです。その状態でボクシングの練習ができるのですか?」


ボクシングジムもといトレーニングルームへ向かい歩きながら、キャノスが心配そうに尋ねる。


「……ちょっと考え事をしていて……」


「なるほど。その考え事は、私には話せないことですか? 相談相手として、私は役不足ですか?」


思いがけない言葉に俺は立ち止まる。


「そんな……、役不足なんて……。むしろ、こんなこと相談していいのかと思っていただけで……」


「どんな相談だろうと、私は聞きますよ」


キャノスが優しく微笑んだ。


イケメンなのに性格もいい。

微笑みだけでも説得力がある。

キャノスになら話しても……。

真摯に聞いてくれるはずだ。


俺はエクリュが言っていたこと、そして俺自身もベリルを見て感じたこと、ベリルが気持ちを押し殺していると知ってから、俺自身も苦しくなっていることを、打ち明けた。


「……そうでしたか。拓海も気づいてしまったんですね」


キャノスが穏やかな笑みを浮かべる。


「……! キャノスも気づいていたのか⁉」


驚く俺に、キャノスは静かに頷いた。


「はい。私だけではありません。ヴァイオレットもバーミリオンも、スピネルも。もしかしたら、アレンやカレンも気が付いているかもしれないです」


衝撃的な一言だった。


「……そうなのか。俺だけが気が付かなかったのか……」


「肩を落とさないでください、拓海。我々とベリル様との付き合いはとても長いのですから。そして我々はベリル様の変化にいつも気を配っています。むしろ、気づくことができなれば三騎士は務まりませんからね。


スピネルに至っては、執事でありベリル様の専属医ですから。我々以上にベリル様の変化には敏感です。体調の変化を見逃すことはできないのですから」


顔をあげ、俺はキャノスを見る。


「じゃあ、みんな知っているのか、ベリルが本当は誰を想っているのかを」


「それは……。予想はついていますが、誰一人としてその件については話していません。ベリル様の秘めた想いを、私達が口に出す必要はないのですから」


「それはつまり静観すると?」


思わず声音が険しくなってしまった。


「そうですね」


キャノスは気にせず答える。


「ベリルが苦しんでいるのに、助けないのか?」


「助けることをベリル様が望んでいるなら、いくらでも助けたいと思います。でもベリル様は、それを望んでいらっしゃらないのです」


「えっ……」


「それだけ難しいことなのでしょう。つまりどんなに想っていても、その想いはどうにもできない、と、お分かりなのでしょう」


……。

人生は思い通りにならないことが多い。

自分がどんなに願って、努力して頑張っても、叶わないことはいくらだってある。


それは分かっているが……。


「私達ではどうにもできないですが、もしかしたら拓海なら……。異世界から来た拓海なら、変えられるかもしれません」


「キャノス……」


「とりあえず気持ちを切り替えて、運動をしてスッキリしましょう、拓海。そしてその後で、ベリル様に会いに行って、話してみては? 拓海になら、ベリル様も考えを変え、打ち明けてくれるかもしれないですよ」


「……そうだな。うん。そうしてみるよ」


キャノスの言葉は魔法だった。

実際、キャノスは魔法使いでもあるのだけど……。

でも俺に魔法は効かないし……いや、少しは効く。

もしかしたら魔法の力なのか?


とにかくキャノスと話を終えた直後から、俺の中のモヤモヤした気持ちは収まった。


さらに運動をすることで、沢山汗をかき、気分もスッキリしている。


俺は気持ちを万全に整え、この日の夜、初めてベリルの部屋を訪ねた。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます‼

本日もゆるりとお楽しみください。

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