65:イチャイチャを全力で阻止
館内が暗くなり、すぐに上映が始まった。
映画は、いきなり一人目が何かに襲われ命を落とすという、ショッキングなシーンからスタートする。俺はその衝撃的なシーンにあわせ、空席のシートの背をドンと叩く。
ベリルの小さな悲鳴が響いた。
シディアンが、ベリルを落ち着かせようとする声が聞こえる。
……まさか、ベリル、シディアンの腕を掴んでいたりしないよな。
昨晩、一緒にこの映画を見た時の様子が頭に浮かぶ。
ベリルはとても怖がりで、俺に身を寄せていた。
同じことをシディアンにしているとしたら……。
全力で阻止しよう。
そう決意し、次のシーンに合わせ、移動を開始した。
◇
上映中、全力で阻止した。
シディアンがベリルとの距離を縮めようとするのを。
シディアンはアレンが言っていた通り、ここぞとばかりに、ベリルへアプローチしている。ポップコーンを食べさせてあげたり、手をつないだり、抱き寄せようとしたり、あまつさえキスまでしようとした。
俺はそれらを見逃さず、突然物音立てたり、空き缶を転がしたり、水鉄砲で水をかけ、そのすべてを阻止。
シディアンは頻繁に起こる怪奇現象に、次第に不信感を抱き始めていた。でも密室の暗い空間という、またとないチャンスを逃したくなかったようだ。怪奇現象を無視し、ベリルへのアプローチを続ける。
その結果、シディアンもベリルも、映画を観ているところではなくなった。
おかげでベリルは、シディアンの腕を掴んだり、身を寄せたりすることもない。
一方のシディアンは……。
ベリルに何もすることができずに終わった。
ガッツポーズで映写室へ戻る。
俺を迎えたアレンとカレンは……。
「個人的にはよくやった!と思いましたけど、あれ、ちょっとやり過ぎですよね、拓海様」
アレンが苦笑いで俺を見る。
「絶対にシディアンも、怪奇現象じゃなく、人為的に誰かが邪魔している、って感じたと思いますよ」
カレンの指摘に、ようやく自分がとんでもないことをしてしまったと気づく。
ハプニングを仕掛けるのが俺の役割。
二人がイチャイチャするのを邪魔することではない。
何やっているんだよ、俺……。
分かりやすく落ち込む俺を見て、アレンがフォローしてくれる。
「拓海様、大丈夫ですよ。この映画館ではポルターガイスト現象が頻繁に起こる、特に男女のカップルで映画を観ている時に頻発するって噂、流しておきましたから」
「アレン……ありがとう!」
「どういたしまして。……でも、そう何度もフォローはできませんからね。気を付けてくださいよ、拓海様」
それは……最もだった。
猛省しながら、自分の部屋に戻った。






