64:モヤモヤした気持ち
ついに俺が仕掛け人として活躍する時間がやってきた。
映画館と言っていたが、要はシアタールームだ。
元いた世界でも、自宅にシアタールームがある家がネットで紹介されていた。座席は2つだけだが、その座席はとても立派なもので、音響設備も整っている。だからこれから俺が向かう映画館も、名前こそ映画館だが、座席数は二つのこじんまりしたものだろうと思った。
入口の扉が見えてきた。
その扉は映画館と同じ防音効果の高い扉だった。
その扉をぐっと押して中に入ると……。
驚いた。
そこはちゃんとした映画館だった。
ざっと数えても40席ぐらいは座席がある。
階段状に席は展開されていて、スクリーンも映画館のそれだった。
後方を見ると映写室も見えた。そこにアレンとカレンがいて、こちらに手を振っている。
俺は映写室に向かった。
「準備は万端ですか、拓海様」
「うん。アレン達も仕掛け人をやるんだな」
「今回は屋内ですからね。外に出てしまうと、移動に時間もとられるので、手伝えません。でもこれでしたら、内職しながらでも手伝えますし」
アレンの言葉にテーブルを見ると、そこにアイロンとカゴに入った衣類が見えた。
「なるほど」
「そろそろベリルお嬢様たちがいらっしゃいますよ」
アレンが声をかけると、カレンが映写室の外に出た。
「ドアマンも兼任です。ドリンクとポップコーンも用意します」
ドリンクにポップコーン。
アレンの言葉に俺は再度実感した。
本当に映画館みたいだと。
俺は二人がどこに座るか確認するため、館内の様子をガラス越しに眺める。
ほどなくして二人がやってきた。
ベリルは、首元にパールのネックレスをつけ、黒のマーメイドドレスを着ている。
裾のフリルは白く、歩く度にフワフワと揺れた。
シディアンのスーツはシルバーピンクで、二人で並んでいると、映画館に行くというよりオペラでも観に行くかのようだった。
えっ……。
よく見ると、ベリルとシディアンがまるで恋人同士のように手をつないでいる。
なんで……。こーゆう場面はただエスコートするんじゃないのか⁉ なんで手をつないでいるんだよ。
シディアンは……性格はとにかく真面目で、お酒も飲まない、たばこも吸わない、賭け事もしない……はずなんじゃないのか⁉
「拓海様、大丈夫ですか?」
アレンの言葉に我に返った。
「いや、その……シディアンは真面目な性格と聞いていたから、いきなり手をつないで入ってきたから……」
「……まあ、お二人とも大人ですからね。それにこれは初めての二人きりでのデートですよ。しかも6人いる候補者の中で、一番目に選ばれたわけですからね。シディアンからしたら、天にも昇る気持ちでしょう。ここは積極的なアピールに出ると思いますよ」
「そういうことか……」
「いくら真面目と言っても、それでチャンスを逃しては意味がないですから。ぼくはシディアンの行動が間違っているとは思いませんね」
アレンの指摘は最もだった。
それにベリルが嫌がったり助けを求めるなら、第三者の俺が怒ったり止めに入ることもありなのかもしれないが……。
ベリルは困惑気味な様子ではあるが、仕方ないと受け止めている感じだった。
……どうしてこんなに気持ちが落ち着かないのだろう。
二人はちょうど、左右からも前後からも、中央になる席に腰を下ろした。
カレンがドリンクとポップコーンを運び、こちらを見る。
「拓海様、上映を始めますよ」
アレンの言葉に頷き、モヤモヤした気持ちを抱えたまま、俺は映写室を後にした。
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