表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode1】死亡フラグ遂行寸前編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/547

61:無敵タイム

ベリルは少し見ただけで怖かった、と言っていたので、それなりの覚悟をしていたのだが……。


ホラー映画と言っても心霊系ではなく、モンスター系。


突然発見された死体があり、犯人は誰なのか⁉となり、最初は姿も見えず、足音だけが聞こえていたり、不気味な声が響いていたりするのだが。次第にその姿が明らかになると……。


犯人はモンスター、不気味なクリーチャーというオチ。


しかもモンスターは分かりやすく、「絶対に死なないわ」と豪語したヒロインの友人、「そんなのどうせ気のせいよ」と彼氏とイチャイチャしているカップル、一人だけ逃げ出そうとした気が弱そうな男子などを、次々と手にかけて行く。


死亡フラグが立ちまくっているので、次、怖いシーン来ます、と俺は分かってしまうのだが……。


ベリルはそんな予想がまったく立たないようで、制作者が見たら大喜びしそうなぐらい悲鳴を上げ、顔を手で覆い、目をつぶって恐怖に耐えている。


それだけではなく、我慢しきれず、俺の腕を掴んだり、俺の体に身を寄せたりした。


それはまるで……。


普段は喧嘩ばかりの女友達と一緒にホラー映画を観て、無敵タイムを手に入れた男子状態だ。


つまり。


「大丈夫だよ、ベリル」


そう言って手を握っても、身を寄せた体をさりげなく抱きしめても、頭を撫でても、一切のお咎めなし、というあの状態が今、現在進行形で続いていたのだ。


ただ、若干困るのは、ベリルは……ヴァンパイアは怪力。


ぐっと掴まれた腕は骨が折れそうだったし、急に身を寄せられた時は吹き飛ばされそうになったが、それ以外は……。


こんな風にベリルの体に触れることができると思わなかった。


柔らかくて、暖かくて、いい香りがして……。

ずっとこうしてベリルと一緒にいたい。

淡い気持ちが心に芽生えた時、映画の上映が終わってしまう。


エンドロールが流れると、ベリルは我に返った。

俺の腕から手を離し、体もゆっくり離す。


名残惜しい気持ちがあったが、電気をつけるため、俺はソファから立ち上がった。


部屋が明るくなると、ベリルはすっかりいつも通りに戻っている。


「まあ、大した作品ではないな。これでオチも展開も分かったし、もう怖く……コホン。明日のハプニングもうまくいくだろう」


あんなに怖がっていたくせに。

でも俺はそれを口に出さず、同意した。


「とりあえずこれぐらいの映画で怖がって、俺が仕掛けるハプニングに驚き、ベリルをおいて逃げ出すような奴だったら、婚約者候補脱落だな」


「そうだな。明日、シディアンとカイがどんな反応をするか楽しみだ」


「え、カイとも同じ映画を観るのか?」


「ああ。事前に二本もホラー映画を観る暇はないからな」


……カイの時に仕掛け人をやるのはバーミリオン。だったらバーミリオンと一緒に、映画を観ればよかったんじゃ……?


「うん、どうした拓海?」


ベリルがルビーのような綺麗な瞳で、俺を見た。


「いや、なんでも。明日、上映中に居眠りしないよう、今日は早く寝ないと」


するとベリルは「そうだな」と寂しそうに頷く。


「ベリル、元気ないな」


「それは……連日、婚約者候補と接しなければならないから。想像以上に疲れる」


「……でも、クレメンス、いい奴そうじゃないか。いろんなハプニングにもちゃんと対応できているし。ベリルのこと、大切にしてくれそうだ」


「……うん」


ベリルが視線を床に落とす。


「クレメンスで決まると思うけど、もしものことがあってもレオだったら……。カイはなんか危うさを感じるけど」


「拓海」


顔を上げたベリルのルビー色の瞳は、悲しみを帯びていた。


「私も拓海のいた世界のように、自由な恋愛をしてみたかった」


「ベリル……」


「だが私はレッド家の次期当主だ。我がままは言っていられない。明日は頼んだぞ」


「分かった」


ベリルはスッと立ち上がるとドアへ向かう。

その姿は凛として、さっきまでの寂しい雰囲気は消えていた。


「おやすみ、拓海」


微笑を浮かべ、ベリルは部屋を出た。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます‼

本日もゆるりとお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●第2回ドリコムメディア大賞●
●一次選考通過作●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇
『【完結】断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇』もおススメです☆

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
『悪役令嬢は死ぬことにした』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ