6:禁じられた行為
「その初夜で血の交換が認められていると言っても、そんな大量の血を吸うなんて許されないだろう?」
「もちろんです。でも過去に事故はいくつも起きているんですよ」
「事故……?」
「拓海様はベリルお嬢様に吸血された時、快感を覚えませんでしたか?」
「そ、それは……」
「照れなくていいのですよ、拓海様。その快感は魔力によって引き起こされるものなのですから、避けようがありません」
「ヴァンパイアの吸血で、強い快感を生み出すことは、ヴァンパイアなら誰でも知っていることです。でも当のヴァンパイアは、同じ種族間での吸血行為を禁じられているため、その快感がどんなものか分からないのです。分からないですが、気にはなりますよね……?」
「まあ、好奇心だよな。……特に思春期にもなるとより気になるだろう」
「ヴァンパイア同士で婚約を結ぶと、初夜を迎える前に血の交換をしてしまう者が出てきてしまうのです」
「!」
「もちろん、禁じられている行為をするので、『ちょっとだけだよ』で始めるのでしょうが、その快感に我を忘れ、お互いの血を吸い尽くし合うという事故が過去にも起きているんです、レッド家以外で」
「レッド家では起きていないのか?」
「はい。一度もございません。レッド家は過去に一度も血の交換に関する不祥事を起こしていないのは勿論、他のことでも一度も問題を起こしていません。だからこそ、レッド家は5つの有力ヴァンパイアの中で筆頭という地位を維持することができているのです」
「そうなのか……。ということは、もしベリルがブノワに血を吸い尽くされ、魔力を奪われていたら、とんでもない事態になっていたんだな」
「はい。禁止されているヴァンパイア同士の血の交換を行った、しかも婚約者同士で初夜を待たずに行った。さらに次期当主であるベリルお嬢様が魔力を失ったとなれば、そんな者がレッド家を引き継いでいいのか。さらにはこんな不祥事を起こしたレッド家を筆頭に、この国の最高権力者にしておいていいのか、ということになります。ブノワの行為はクーデターに近いことでした」
「でも、血を吸ったのはブノワだ。ベリルは……ブノワの血を吸っていないのだろう?」
「はい、その通りです。でもいくらでも取り繕うことはできます。これが吸血された痕だと傷口をでっちあげるかもしれません。はたまた快楽で我を失ったベリルお嬢様から色仕掛けで血を吸うよう強引にそそのかされ、仕方なく一方的に吸血行為を続けた……いくらでも言い訳は考えることができます」
「本当にひどいな……。ベリルはかなり量の血をブノワに吸われたのだろう? 魔力も相当失ったんだよな?」
「そこなんですよ、拓海様」
「?」
「拓海様の血を吸ったベリルお嬢様は失われた血を取り戻しただけでなく、魔力も元に戻ったのです」
「……!」
「だからこそ、拓海様を連れ帰ったのです」
命拾いした理由が解明された!
「そうなのか……。それで今、ベリルはどうしているんだ?」
「父上であるロードクロサイト様とお会いになっています。かれこれ二時間ほど話し合いをされているので、そろそろ終わるかと」
その時だった。
アレンが部屋に戻ってきたと思ったら、その後ろにベリル、ヴァイオレット、さらに二人の美しい女性、かなりのイケメンの騎士、貫禄のある男性、執事と思わしき初老の男性が部屋に入ってきた。
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次回更新タイトルは
『男でも感じちゃうのか……』
『白衣の巨乳美女』
『死ぬ寸前だったから?』です。
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