56:ベリルの腰に腕を回した
続いてのエクリュは、アメジスト色の薄手のシャツに黒い七分丈ズボンという姿だった。
目の前に焦げた肉を差し出されると……。
「実は、ぼく、もうお腹いっぱいで」と答え、肉を食べることを辞退した。
ハンベルグもエクリュと同じ理由で、焦げ肉を食べない。
ちなみにハンベルグは、日焼けした肌によくあうサルファーイエローの長袖シャツを、肘の上あたりまでたくしあげ、ジーンズをはいていた。
ついに順番が回ってきたカイは、顔をゆがめ、苦々しい顔をしながら、でも口では「美味しい、美味しい」と言って、7枚の焦げた肉を食べた。カイはビリジアン色の生地に、黒のラインチェック柄のはいった半袖シャツを着ている。焦げ肉を食べ終えると、シャツにあわせたかのように顔色が悪くなっていた。ご愁傷様です……と声をかけたくなる姿だ。
最後は……クレメンスだった。
「クレメンス、肉を焼いた。食べないか」
ベリルが差し出した焦げ肉がのった皿を見ると、クレメンスはビーチチェアから立ち上がる。クレメンスは半袖のデニムシャツに赤いジーンズ姿で、なんというかベリルとペアルックみたいだった。
クレメンスは焦げ肉がのった皿を受け取ると、ベリルの腰に腕を回し、「おいで」と優しくバーベキューコンロへいざなう。
クレメンスはまず網を新しいものに変え、網をあたためると、カルビをトングでつまむ。そしてゆっくり網にのせ、ベリルを見た。
「まずは片面を焼く。裏返すタイミングは……見てご覧、ベリル。ここ、白くなってきただろう。こうなったら裏返す」
すっとトングで持ち上げると、カルビを裏返した。
「こちらの面に焼き目がついたら完成だよ」
クレメンスはタレを入れた小皿に、今焼いたばかりのカルビをつける。
軽く自身の息を吹きかけ、肉を冷ますと……。
「ベリル、食べてご覧」
自然な流れでそう言われたベリルは、素直に口を開いた。
クレメンスはベリルの口にカルビを入れる。
「……美味しい」
本当に美味しかったのだろう。
ベリルの顔が笑顔になっていた。
「それは良かった。今のやり方を真似して焼いてご覧、ベリル」
クレメンスはベリルの頭を優しく撫でた。
「うん。王子様ね。完璧な対応。咄嗟にあの行動をできるなら、それは演技ではない。あれがクレメンスという人間だと思うわ」
スピネルの言葉に、ヴァイオレットもバーミリオンも頷いた。
「私だったら、食べる瞬間に魔法で焦げをとったと思います。……クレメンス、すごいですね」
キャノスもため息をついた。







