41:つ、遂にだ!
ベリルが俺を吸血するのは、初めてのことではない。
だからいつも通り、寝間着の上衣を脱ぎ、ベッドに横になろうとすると……。
「拓海はもうヴァンパイアだ。人間の時とは違う。座ったままで試してみよう」
そこで俺はベッドに腰かけ、ベリルは俺のそばに立つ。前屈みになったベリルは、首へ牙を落とす。
いつも通りだったが……。
ベリルは魔力の量を調整しない。それでも俺がヴァンパイアになったからか、もう快感でどうにもならん!という事態はなんとか免れているが……。
気持ちいいことに変わりはない!
しかも吸血するベリルが、なんだかいつもと違う。
息遣いが荒いし、頬は唇と同じぐらいルビー色になっているし、俺の肩に触れている手も熱く感じる。
そんなベリルを見たら当然、俺の興奮も高まる。
「ベリル……」
完全にベリルをどうかしたい気持ちになり、その名を呼ぶと、ベリルが妖艶に微笑む。もうその妖艶さを見てしまったら……。
体内を渦巻く快感を無理矢理抑え込み、そのままベリルをベッドへ押し倒す。
敷き詰められた薔薇の花びらが白いシーツの上で揺れている。
血の交換は終わっている。
つまり次は……誓いのキスだ!
「ベリル、もう……いいよな? 血の交換は完了した」
「……そうだな。では……誓いのキスだ」
つ、遂にだ!
もう心臓がとんでもなくバクバクしている。
これがファーストキスになるけど、いいよな?
婚儀の夜だし、ベリルは薔薇のベッドの中で美しく横たわっている。これは今後何度思い出しても、実に綺麗な思い出になるはず。
間接照明を受け、淡く輝くチェリーレッド色の唇を見る。
艶々として、ぷっくりとして、アメリカンチェリーのようだ。
「ベリル、大好きだ。俺の命が尽きるまで、ベリルだけを愛するよ」
誓いのキスだけど、何を言うかは定められていない。
でも自然と、言葉が口をついて出てきていた。
「ありがとう、拓海。私もこの命ある限り、拓海だけを愛する」
なんて感動的な言葉なんだ。
ベリルと初めて会った日のことが、ついこの間のようによみがえる。
供物だったのに。
俺はベリルにとって、供物だったに過ぎないのに。
つい感慨深い気持ちになり、感無量になるが、ここはまず、誓いのキスを。
そう思うのだが。
ガチガチに緊張してしまい、なかなかベリルに自分の顔を、近づけることができない。
緊張で手が震えるわ、鼻息が荒くなるわで、どうにも、こうにも、格好がつかないじゃないか!
「……ごめん、ベリル、き、緊張し過ぎて」
「大丈夫だ、拓海。……私も緊張している」
「そうなのか……!」
「当たり前だ。大好きと想う相手との初めてのキス。緊張するだろう」
そ、そうだよな。
ベリルはいつも凜として、次期当主に相応しい器の持ち主だったから。こんな時も落ち着いているかと思ったけど……。
乙女だった。
「仕切り直しで」
俺はそう言うとまずはベリルを抱きしめ、比較的難易度が低い頬や額、鼻の頭へキスをして、そして――。
あ、柔らかい。
なんだか実感がない。
でも、これ、ベリルの唇だよな。
うっすら目を開け、間違いなく、唇へキスしていると分かった瞬間。
もう、涙が出そうになる。
ゆっくり唇を離すと、ベリルのルビー色の瞳と目が合う。
でも照れくさくて何も言えない。
だからもう一度、キスをする。
唇へのキスを繰り返していると、気持ちがどんどん高まって行く。
ファーストキスの時は、もうとにかく緊張だったけど、今はベリルを求める気持ちの方がどんどん高まっているのが分かる。ただ、それはベリルも同じ。伸ばした腕は俺の首に絡み、繰り返しているキスにも、ちゃんと答えてくれている。
気づけばベリルは、部屋の間接照明も消してくれていた。
つまりこの後は――。
俺の中に、もうモールはいない。
この部屋には、ベリルと俺の二人きり。
ちゃんと部屋には、防音魔法がかけられている。
きちんと手順を踏んでいた。
するべきことはしている。
婚儀も挙げたし、皆に祝ってもらい、俺はヴァンパイアにもなったのだから!
ベリルの白いネグリジェは、不慣れな俺のためなのか。
胸元のリボンを解くと、驚く程簡単に、脱がすことができた。
お読みいただき、ありがとうございます!
ベリル様と拓海がついに~~~
次回更新タイトルは
『タイトルサプライス』
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






