表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
Episode7二人の愛完結編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

532/547

27: ……暇だ。

今日は日中、ベリルはブライダルエステを受けていた。なんでもウェディングドレスを着るにあたり、産毛を剃ったり、全身のトリートメントをするらしい。


一方の俺も身だしなみを整えるということで、髪を切ってもらった。


俺自身としては、騎士の訓練にも参加したかったが、さすがに婚儀が近いからと、ストップがかかった。仕方ないので軽くストレッチだけ行う。


明日は生花以外の飾りつけが行われ、その立ち合いをすることになっていた。さらに余興で登場する歌手やマジシャンなどのリハーサルも行われるので、それも見学する予定だ。


つまり、婚儀前日はいろいろ予定もあるが、前々日の今日、新郎である俺は……暇だ。


暇な俺を護衛するシナンも……暇そうである。


一方、ベリルはエステもあるし、ヘアケアもあるから、暇ではない。だからベリルの三騎士であるヴァイオレット、キャノス、リマも当然、暇ではなかった。


ロードクロサイトやカーネリアンはいつも通り、執務に追われている。


騎士やアレンやカレンなど使用人も、婚儀の前で当然、様々なことに追われていた。スピネルやフローライトでさえ、婚儀の準備を手伝っている。


「俺は……こんなに暇でいいのかな」


「いいと思うぞ、拓海様。今日まで婚儀の準備で奔走されていたからな。俺は拓海様がノートパソコンの『J』のボタンを押したまま寝落ちしている姿を何度も見ている。5ページ分連打されていた『J』の文字は呪いのようだった」


確かにそんなことも度々あった。


「じゃあ、俺、昼寝でもするよ。俺の部屋にはキャノスの防御魔法もかかっているから、シナンは自由にしてもらっていい」


「分かったよ、拓海様。レッド家の敷地内は厳戒態勢だから、侵入者なんていないだろう」


シナンはそう言っているが、多分、向かいの部屋で待機してくれる。


あくびを一つした俺は、ベッドで大の字になる。

今晩から夜更かし禁止で、強制的にキャノスの魔法で22時前には眠らされることになっていた。勿論、ベリルが部屋に遊びにくることもない。

もう婚儀は目前。

睡眠不足や体調不良は許されない。

そのためにはぐっすり休むべし――ということだ。


――拓海。



聞き慣れた声に、俺は驚き、ベッドから起き上がる。


カフェオレのような肌に、艶のある黒髪。その黒髪からは角が伸びている。さらに長い黒髪は後ろに一本で束ねられていた。二重の瞳の色はターコイズグリーン、鼻は高く、血色のいい唇。そして長身で鍛えられた肉体の持ち主。


「モール、どうしたんだ!?」


「拓海。お前、いよいよ婚儀を挙げるのだろう?」


「! そ、そうだよ。……そうか、ごめん。招待状、送っていないよな」


俺の言葉にモールは爆笑する。


「拓海、招待状の住所はどうするつもりだ?」


「それは……」


「招待状などいらぬ。我と湖の乙女はどんなに離れていても、拓海のことを見ることができる。婚儀は湖にある城からのんびり眺めさせてもらう」


湖にある城? そんな城、あったのか!?


「湖の城。それは我と湖の乙女しか認識できぬ」


「そうなのか。……あれ、そうしたら今日は……もしかしてお祝いのメッセージを直接伝えるために来てくれたのか?」


「まあ、それもあるか。あのベリルという美しいヴァンパイアと幸せになるといい、拓海」


……! モール、なんていい奴なんだ! とても元魔王とは思えない!


「ありがとう、モール、嬉しいよ。……そうだ、引き出物、持って帰るか?」


またもモールが爆笑する。


「いらぬ、いらぬ。この世界に我は存在しているが、食べ物は不要だからな。気持ちだけ、もらっておく」


「……食べ物は不要なのか……。それは残念だな」


するとモールは愉快そうに笑った。


「魂だけの存在であるからな。空腹からの解放。それはそれで悪くはないぞ。もはや食の記憶も薄れつつあるから、食事をしないことへの不満もない」


「そうなのか……」


「ところで、拓海。我がここに来た理由を明かしてもいいか?」


それは勿論、知りたかったことなので力強く頷く。


「拓海は、ヴァンパイアはキスをすれば、子供ができると思っていた。どうやらその辺りの知識が疎いことが判明している。だが明後日には婚儀を挙げるのであろう? その無知なままでは無理だろうな」


「え!」


「拓海。我が直々に婚儀を挙げた夜、つまりは初夜で何をするか、伝授してやろう」


まさか、そのためにモール、ここにやってきたのか!?


「安心せよ、拓海。我の力があれば、その経験は魂がするだけで、その肉体は無垢なままだからな」


「って、モール、何をするつもりで」


その後のことは……。


それは夢だったのか。


確かに次に目を開けた時、俺の肉体に何ら変化はなかった。


だが……。


脳の中には……あのことに関するあらゆる知識が詰め込まれていた。

既にモールの姿はないが。

とりあえず俺の初夜に関する不安は、一掃されたということだけ、言っておこう。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回更新タイトルは

『誰だ?』

誰かが来る……!


それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。

明日のご来訪もお待ちしています!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
●第2回ドリコムメディア大賞●
●一次選考通過作●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇
『【完結】断罪終了後に悪役令嬢・ヒロインだったと気づきました!詰んだ後から始まる逆転劇』もおススメです☆

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
『悪役令嬢は死ぬことにした』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ