20: ポニー
俺は自分ツッコミを入れながら、ベリルに披露宴のドレスについて説明する。
「披露宴のドレスはこれ。ベリルのワイン色の髪と同じ色で、薔薇の花を表現しているんだ。光沢のあるシルクサテン生地で、ここを中心に薔薇の花びらが広がっているように見えるデザイン。装飾はベルベッドのウエストリボンだけで、もうこのドレス全体の薔薇を招待客に見てもらうイメージなんだよ」
「これは……初めて見るデザインのドレスだ。斬新だが、実に美しい。本当に薔薇の花が咲いているようだ」
顔をさっきより近づけ、モニターに映るドレスを、ベリルが目を輝かせながら見ている。
「だよな! これも仮縫いが終わっているから、ウェディングドレスと一緒に合わせてみてよ、ベリル」
「勿論だ、拓海。私のために素敵なドレスをオーダーしてくれて、ありがとう!」
ベリルが俺にぎゅっと抱きつく。
そうなるともう、俺の気持ち的には、ドレスの確認どころではなくなり……。
それはベリルにも伝わり、その後は……。
イチャイチャして眠りにつくことになった。
◇
怒涛の3週間が終わり、カーネリアンとバーミリオンが帰国した。二人ともこんがり日焼けしており、ハネムーンを満喫した感が半端ない。
沢山のお土産も受け取り、それはまるでハワイのレイのようなものだったり、南国のフルーツを使ったチョコレートだったり、素敵な香りの石鹸だったりと実に様々。
数日の間、レッド家には南国を思わせるいい香りが漂い、皆、季節が秋であることを忘れた。
でもその香りも収まると、レッド家は通常稼働に戻るかと思われたがそんなことはない。
今度はベリルと俺の婚儀の準備が本腰段階に入った。
無論、ベリルも俺も、通常の範囲でそれぞれ執務。訓練を送っている。そこに婚儀にまつわるあれやこれ……つまりは席順の決定、宿泊施設の手配、交通手段の確保などなどが始まった。
ただ、ここら辺はカーネリアンとバーミリオンの婚儀を参考にできるから、とてもスムーズだった。パレードで使う車や警備体制、コースなども流用できるから有難い。
後は自分達の衣装の確認、これはさすがに流用できない、披露宴の最中の歌手やショーをお願いする人物などの選定を進めた。これを進めている時、丁度、ブラッド国でお馴染みの5つの有力ヴァンパイアが共同開催で行う「オータムフェスティバル」の準備をベリルは行っていた。
オータムフェスティバルは、秋の行楽イベントの一つで、街の住人を無料で招待する。川のそばで飲食が提供され、森の中では宝探しのゲームが行われ、草原では乗馬体験や剣術や魔術披露などが行われるのだ。
「披露宴のショー……そうだな。ポニーは今年、五頭手配しようか。確かレッド家配下の牧場で二頭、丁度がいいのがいたはずだ」
「!? ベリル、披露宴の会場に動物をいれるのか? ポニーは確かに可愛いから、子供達は喜びそうだけど」
「! すまない。拓海。それはオータムフェスティバルの話だった」
そんな笑い話のような会話をすることもしばしあった。
でもこのポニーで子供を喜ばす……は思いがけず婚儀の中で採用されることになる。というのも俺達がパレードを行っている最中やダンスの合間、大人はまだしもまだ幼い子供は暇になってしまう。そこまで幼い子供は多いわけではないが、ゼロではない。よって今回、ポニーやウサギなど動物の触れ合いコーナーを設置することになった。これは大人であっても癒しになるし、目新しいし、楽しめるはずだ。
そんな感じで婚儀の準備は進み、そしてオータムフェスティバル当日になった。
早朝から動き出し、あの蛍の森へと向かう。
蛍の森と言えば、「ザイド」による襲撃を受け、リマとレイラ、ゼテクやジャマールと出会うことになった森だ。あの時は敵対関係だったが、今は仲間。なんとも不思議な気持ちになる。
「拓海、何、ぼさっとしているの。とっと宝を隠しなさいよ!」
隊服姿のリマの声に我に返る。
今、リマ、シナン、俺の三人は宝探しの会場となる森の中に、宝となるアイテムを隠している最中だった。
宝……それはお菓子だったり、雑貨だったり、ぬいぐるみだったり、様々だ。
お菓子はできればこのフェスティバルの最中に、すべて見つけて欲しい。だから分かりやすい場所に隠す。
雑貨は今回見つからなくても、いつか見つかりサプライズになってもいい、ということで少し分かりにくい場所へ隠す。
ぬいぐるみはもう、それこそ子供が喜ぶように、ウサギのぬいぐるみなら草むらに。ふくろうのぬいぐるみなら、木にあいたうろの中に。りすなら木の枝と、子供も見つけやすい場所に隠す……置くことにした。
一応ルールで、持ち帰る宝は一人三点までとなっているので、一度に大量に宝が持ち去られるわけではない。それでも今日は何度か補充することになるだろう。
「ひとまずこんな感じでいいかな。入口に戻るか、拓海様」
シナンにそう言われ、振り返った俺は、そこにとんでもないものを発見し、息を飲むことになった。
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次回更新タイトルは
『どうして、そんなに小さい?』
何かを発見!
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






