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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
Episode7二人の愛完結編

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14: この結末は

「拓海! もうよいぞ!」


湖の乙女とモールの姿がようやく見えた。

ベリルと二人、窪みから出る。

すぐにヴァイオレット、ゼテク、キャノスが駆け寄る。

お互いの無事を確認しあい、湖畔へと向かう。


「みんな無事だったかしら? ちゃんとモールが護ったわよね?」


湖の乙女は落ち着いた様子で俺達に話しかけた。


「はい。こちらは無事です。一体何が起きていたのですか?」


俺が尋ねると、湖の乙女は「もう、ウンザリしてしまうわ」という感じで肩をすくめた。


「マグネス(死の使者)はね、全部で十二体いるのよ。その全員がいきなり攻撃をしてくるから。でもね、魔王サナトス。あなたを私のものにした後でよかったわ。期待通り。私の力を得たあなたはとても強くて素敵よ」


湖の乙女はそう言ってモールに抱きつくが、その二人の姿はまるで……。

もう、ベッドで抱き合っているようにしか見えない!


「十二体ものマグネス(死の使者)を二人で撃退したわけですね。それはすごいと思います。確かにあなたの加護で私達は助かった。……この先、再びマグネス(死の使者)が襲ってくることはあるのでしょうか?」


ベリルは……あんなに濃厚に二人が抱き合っていたのに、一切動じる様子がない。冷静に湖の乙女に話しかけている。


「ええ。半分は再起不能レベル、残りの半分も相当なダメージよ。この次、仕掛けてきたら、もう容赦はしないから。そうなると、本来の彷徨う死者の魂の回収ができなくなってしまうわ。さすがにね。ジェットもそれは困るでしょうから。私達からは手を引くと思うわ」


そう言った湖の乙女は、ついにモールにキスをしている!

再び直視できなくなるが、ベリルは落ち着いて話しかけていた。


「それは素晴らしい。さすが湖の乙女ですね。あなたの言葉を私は信じます。ただ万一があった場合、窮地をあなたに知らせる方法はありますか?」


「そうね。ではこれを差し上げるわ。この鈴は普通の状態では鳴らない。あなたが心底死の危機を意識した時にだけ、鳴る。その鈴の音は必ず私の処へ届くわ。その鈴が鳴った時。そこがどんな場所であろうと。例えデスヘルドルだとしても、私は駆け付け、あなた達を助けるわ」


そう言った湖の乙女の手には銀色の丸い鈴が見える。それは俺がよく知る鈴とは違い、前世で言うところのガムランボールのように見えた。


ベリルと俺は湖畔の方へ数歩近づく。

俺がベリルの体を支え、ベリルは腕を伸ばし、湖の乙女からその鈴を受け取った。


「まあ、その鈴がなくても。ここに来たら、いつでも顔を出してあげるわ。だからね。もういいかしら? 私はもう我慢できないの。せっかく彼を手に入れたのだから」


またもや湖の乙女がモールに絡まるように抱きついている。

この姿を見せられる度、俺の心臓は爆発しそうになっていた。


「ええ、もう邪魔はしません。ありがとうございます。お幸せに」


「ふふ。あなたもね。美しいヴァンパイア。その人間は見た目ではなく、本当に綺麗な心を持っているわ。とても素敵な輝き。滅多にない。大切にするといいわ」


この言葉にベリルは輝くような笑顔になる。

俺は今のって俺のことか!?と軽くパニック。

そうしているうちにも、湖の乙女とモールの姿は煙が消えていくように薄くなり、ついにその姿は見えなくなってしまう。


「終わったようじゃのう」


ゼテクの言葉を合図に、皆、ベリルと俺のそばに集合した。


「あの様子を見る限り、モールは湖の乙女と結ばれること、まんざらではないように思えましたよ」


キャノスがそう言うとヴァイオレットも即同意を示す。


「あんなに情熱的に抱き合っていたんだ。相思相愛に違いない。きっとモールは幸せになる」


「そうじゃな。あの湖の乙女であれば、モールは飽きることはないじゃろう。何より、モールにとっても宿願が叶ったわけだから」


「ゼテク、それはどういうことだ?」


俺の問いにゼテクは、持論を披露する。


「モールは……魔王サナトスは、ティストラン大陸の覇者になりたいと願っていた。それはこの大陸で絶対的に強いのは自分になる――ということじゃろう。奇しくも湖の乙女と結ばれることになった魔王サナトスは、この世界のことわりを超えた力を手に入れた。ついでに美しい女も。もはやこの世界を超えた覇者も同然じゃ。奴にしてみればこれ以上ない結果じゃろう」


なるほど。

そういうことか。

言われてみれば……その通りだ。


「だから拓海。この結末は間違っていない。モールがいなくなり、寂しいかもしれないが。モールは幸せになるのだから。悲しむ必要はない」


ベリルの言葉にヴァイオレット、ゼテク、キャノスが頷き、俺を見た。


みんな、モールがいなくなり、俺が悲しむと思い、励ましてくれているんだ……!


モールがいなくなったことより、みんなの優しさに涙が出そうになる。でもそれを堪え、俺は笑顔で告げる。


「これで一件落着だな。……帰ろうか」


気付けば空が茜色に染まり、夕陽が静かに沈むところだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回更新タイトルは

『わが心の友よ!』

意外な人物がやってきて……。


それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。

明日のご来訪もお待ちしています!!

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