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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
Episode7二人の愛完結編

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9:えっとつまりそれは……

シナンは問題ない。となると後はモールの気持ち。湖の乙女がどう反応するかだ。


「湖の乙女がモールに無関心だったら……その時はもう仕方ない。本当に万策尽きた状態だ。モールにはおとなしくデスヘルドルに帰ってもらおう。ここまですればモールだって拓海を許すと思う」


「ベリル。モールは無条件でデスヘルドルに戻るつもりだと、昨晩俺に伝えてくれたよ」


そこで俺はみんなに、昨晩モールと話したことを聞かせた。

これを聞いたみんなは……しんみりとしてしまう。

居座るとモールが主張したり、俺の体を乗っ取ると言ってくれたりすれば、みんな気持ちが楽だったはずだ。でもそうではない。モールはそんなことをせず、運命を受け入れた。それは……どうしたってなんとかしてやりたいという気持ちになってしまう。


「成功するかどうか分からない。だがこれが私達にできる最善ということで、拓海、モールと再び話してもらえるか?」


ベリルがルビー色の瞳を俺に向ける。


「勿論だ。みんな、寝ずに考えてくれてありがとう。ここにいないロードクロサイト、カーネリアン、バーミリオン、ゼテクにも感謝していると伝えてほしい」


「無論だ。朝食はここに運ばせるから、食事でもしながらモールと話すといい。私達は一旦部屋で待機するから」


このベリルの言葉に皆、部屋から出て行き、俺は着替えを始めた。いつもの制服に。その間にアレンとカレンが朝食を窓際のテーブルに運んでくれる。


着替えを終えた俺は、椅子に座った。

アレンがカップにコーヒーを注ぐ。

その様子を見ながら、モールに呼びかける。


モール、おはよう、起きているか。


――ああ、起きている。


朝食、食べるか?


――そうだな。デスヘルドルに行けば朝食なんて食べないからな。


よし、じゃあ、交代だ。


俺とモールが意識の交代をした時、丁度、給仕を終えたアレンとカレンが出て行った。


「うん。このコーヒーは旨いな」


モールはコーヒーをゆったりと飲んでいる。


最初、コーヒーを見た時は、「こんな泥水、飲めるか!」と言っていたのに。


「それは仕方ない。コーヒーなんぞ、昔はなかったのだから。で、我に朝食をとらせるためだけに呼び出したのではないのだろう?」


――ああ、そうだよ。


モールはオムレツを口に運び、パンを手に取る。


――モールがこの世界に残れる可能性を、みんなが模索してくれた。俺が寝ている間、みんなが調べてくれた。


「……ほう。それで」


モールは焼き立てのパンをちぎり、頬張る。


――モールは精霊を知っているか?


「ああ、知っている。そうか。なるほど。奴らはこの世界のことわりとは別次元で存在している。いわばデスヘルドルと同格。いや、それ以上か。デスヘルドルを統べるジェットもマグネス(死の使者)も、基本的にかの地から出ない。だが精霊はどこへでも行けるからな」


――どうやらモールは精霊には詳しそうだな。


「ああ。我の生きていた時代から存在しているからな。で、その精霊と我がどう関連してくるのだ?」


――うん。その話の前に、そのテーブルに置かれている羊皮紙を開いてもらえるか。


モールはベーコンを食べるとフォークをおき、手にした羊皮紙を開く。


「……ほう。これは我ではないか」


――やはりそうなのか。この姿はそっくりなのか?


するとモールは羊皮紙をテーブルに置き、パンを口にほうった。そして「クックッ」と不穏に笑う。


「実物の方が数倍優美であるがな」


――なんだよ、それは。というか、モール、お前、シナンに似ているんだな。


「……人間に似ていると言われるのは我としてはな。ましてや自分から人間に似ているなど言うつもりはない」


そう言ったモールは残っていたオムレツを一気に平らげた。


――シナンのほくろ。あれ、何であるか気付いていたか?


モールはウインナーをパクリと食べ頷く。


「精霊がつけたものであろう」


――うん。そうだ。シナンにあのほくろをつけた精霊は、湖の乙女と呼ばれている。シナンのことを気に入った湖の乙女が、ギフトとしてシナンに与えた。


そこで俺は、シナンがあのほくろを湖の乙女に与えられることになった経緯を話して聞かせた。


「ハハハハハ! シナンは本当に面白い人間だ。千人の女を抱かないと、お前のものになるつもりはないと、精霊と交渉するとはな! ネフライトと交渉した拓海に負けず劣らずだな」


――まあ、それでだ。湖の乙女はシナンが好きだ。シナンの恐らく見た目が好きなのではないかと。


「まあ、そうだろうな」


――やはりそうか。


「我がな、一度断っているから」


――え!?


「湖の乙女という名は、我のいた時代から変わらぬ。美しい女だ。抱けるものなら抱きたかったがな。あの女を抱くにはこの魔王であっても無理だ。一度死に、魂にならなければ抱くことは叶わない。だから求婚されたが断った。我はティストラン大陸の覇者を目指し始めた頃だったしな。タイミングも悪かった」


――えっとつまりそれは……。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回更新タイトルは

『解決?』

希望の兆しが。でも……?


それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。

明日のご来訪もお待ちしています!!

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