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5:初夜の時にだけ許されること

「僕達がいるのはティストラン大陸です。この大陸は5つのエリアに分かれています。僕達がいるのは、ヴァンパイア一族が暮らすブラッド国です。ブラッド国には5つの有力ヴァンパイアの家があり、その筆頭がレッド家、以下がブルーノ家、ジョンブリアン家、ピスタチオ家、クラウド家です。つまりベリルお嬢様のお父君が、このブラッド国での最高権力者と言えるでしょう」


「他の4つのエリアは?」


俺はパンをスープに浸して口に運びながら尋ねた。


「他の4つは、ぼく達ライカンスロープが暮らすウルフ王国、魔法使い達が暮らすテルギア魔法国、人間が暮らすポリアース国、死者が暮らすデスヘルドルです。ブラッド国とウルフ王国は友好国だから、ぼく達みたいに出稼ぎで働きにきているライカンスロープも沢山いるんですよ」


「なるほど……。それでなんでベリルは自分の婚約者に襲われたんだ?」


その問いに答えたのはカレンだった。


「5つの有力ヴァンパイアは純血の一族なんです。つまり代々純血のヴァンパイア同士で婚姻を行い、血筋を守ってきました。そのためこの5つの家の間で婚姻関係を結ぶ、というのは当たり前なんです。


レッド家にはカーネリアン様という長男がいたのですが、3年前に魔女にさらわれてしまいました。そのため、ブルーノ家の次男・ブノワを、ベリル様の婿として迎える婚約が両家の間で決められていたのですが……。


将来的にベリル様がレッド家当主となり、ブラッド国の最高権力者になります。ブノワはその最高権力者の夫という立ち位置では満足できなかったようなのです」


「それでベリルの血を吸って殺そうとしたのか⁉」


「もっと悪いですね。ベリルお嬢様はヴァンパイアですので、血を吸い尽くされたところで死ぬことはありません」


「じゃあ、なんで……」


食事を終えた俺のトレイをアレンが手に持ち、部屋を出て行った。


「通常、ヴァンパイア同士での吸血行為は禁止されています。なぜなら、ヴァンパイアがヴァンパイアの血を吸うと、それは同時に魔力も吸いとることになるからです。なお、魔力はヴァンパイアの全身を巡っていますが、それは血管の中を流れています。


そしてレッド家が5つの有力ヴァンパイアの中で筆頭という立場にあるのは、この魔力が大きく関係しているんです。ヴァンパイアとしての強さはもちろん、魔法使いに引けを取らない魔力を持つことから、レッド家は筆頭に選ばれているのです。


その魔力は代々レッド家で受け継がれてきたもの。ですから、レッド家以外の他の4つの家は、より強力な魔力を得ようと、レッド家との婚姻関係を結ぶことを常に欲しています。


本来、ベリルお嬢様との婚約をブノワは喜ぶべきだったのですが……。婿入りとなると、いくら強力な魔力を持つベリルお嬢様を妻としても、生まれた子供はレッド家に属します。ブルーノ家の魔力強化のために役立てることはできません。さらに自身は最高権力者のただの夫。


どこをとってもブノワは満足ができず、ベリルお嬢様を襲ったのです。そしてその血を吸い尽くし、ベリルお嬢様の魔力を我が物としようとしたのです」


「ひどいな……。それをブルーノ家の当主は許していたのか?」


「それはどうなのでしょう。今きっと調査が進められていると思います。ただ、ブルーノ家は昔から筆頭の地位を狙っていたので、当主が一枚噛んでいる可能性は……。もし首尾よくベリルお嬢様から魔力を奪い取れれば、後はいくらでも取り繕いようがあると思いますから」


「魔力を奪っておいて、取り繕うことなんてできるのか⁉」


「通常、ヴァンパイア同士での吸血行為は禁止されているのですが、唯一例外があるんです」


「例外……?」


「はい。婚姻の儀式の後の初夜で、夫婦となるヴァンパイア同士では互いの血の交換――すなわちお互いの吸血行為が認められているのです。これはちぎりというか、誓いを立てるに近い行為なのですが」


初夜……。


いきなり心臓がドキッとする言葉が飛び出し、俺の顔色は変わったと思うのだが、カレンは何もツッコむことはなかった。


だから俺も素知らぬ顔で質問を続けた。


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