46:早くベリルのところへ行きたい!
バスルームにつくと、猛烈な勢いで髪を洗い、湯船に飛び込む。
早くベリルのところへ行きたい!
だがベリルとイチャイチャするなら、体は綺麗にしておかないと。なぜならベリルは、背中や脇腹と、いろいろなところにキスをするからだ。
その様子を思い出すと、頬が自然と緩む。
気持ちは急くが、ちゃんと体を洗い、寝間着に着替え、髪を乾かすと。待ちきれない思いで、「ベリル!」と叫びながら、バスルームを出た。
え……。
甘~い気持ちが吹き飛んだ。
リビングルームには、ベリルと向き合い、ソファに座るミランダとカイがいる。さらに国王陛下付きの、近衛兵までいた。少し離れたテーブル席には、ミランダとカイの三騎士、そしてキャノスとシナンも控えている。俺はぎこちなく笑いながら、ベリルのそばに行く。
「拓海、いいところに戻ってきた。丁度、こちらのデビー近衛兵長が教えてくれたのだが、シドニーが逮捕されたそうだ」
「そうなのか!」
ベリルの隣に腰を下ろすと、キリッとした、なかなかのイケメンライカンスロープが、俺を見て会釈する。
「デビーと申します。拓海様。シドニーはテルギア魔法国との国境付近で身柄を確保され、現在、この王都マホロへ移送中です。逃亡を企てていたことも判明しているので、極刑が下されます。移送はベアウルフの部隊が行っているので、間違いなく、この王都へ連行されます。この度は本当に、ここにいる皆さまにご迷惑をおかけすることになり、申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げるデビー近衛兵長に、顔を上げるようにと、ベリルは促す。
「首謀者が捕まり、安堵しました。これで明日の結婚式もひとまず安心ですね」
ベリルの言葉に、デビー近衛兵長は力強く頷く。
「ベアウルフが投入されたという話も広まり、シドニーの組織の構成員のほとんどが、投降してきました。組織は壊滅も同然。ご安心ください」
こうして報告を終えたデビー近衛兵長を先頭に、皆、部屋を出て行った。
急に部屋の中ががらんとして、静かになる。
「休もうか、拓海」
ベリルの言葉に頷き、俺は寝室へと向かう。
一方のベリルは、洗面所に向かった。
そのままベッドに座り、ベリルが来るのを待つ。
ベリルは『魔王の笛』騒動の謝罪行脚のため、ワンピースに着替えていた。だから今は寝るために、寝間着に着替えている最中だ。
今晩のベリルは、どんな姿で寝るつもりなのだろう。
少し、いや、かなりワクワクしながら待っていると……。
バニラホワイト色のネグリジェに着替えたベリルが、寝室に入ってくる。
う~ん。この清楚な白いネグリジェも堪らないな。
ワイン色の髪は苺、ネグリジェは生クリームと、またもベリルが美味しそうに見える。
とはいえ、いきなり甘えるのも気恥しかったので、さっき聞きそびれたことを、ベリルに尋ねる。
「それでベリルはシドニーのひいじいさんと、何か因縁があったのか?」
俺の隣に来たベリルは、そのままベッドに横になる。
「うん。大ありだった。ひいじさんの名前を聞いて、ようやくピンと聞いた。拓海が入浴中に、カイやミランダお姉さまには話したが……それは私が子供の頃にさかのぼる」
「!? そんなに古い知り合いなのか!?」
「知り合い、か。私は知り合いなんて思っていないが」
苦笑いするベリルの隣に、俺も横になる。
ベリルは横になった俺の方に、自身の体を向けた。
「ベリル、こっちに来て」
腕を伸ばし、ベリルに腕枕をした。
甘い香りに、幸せな気分になる。
「ウルフ王国には、何度も来たことがあり、小さなトラブルは相応にあったが……。一度だけ、肝を冷やす思いをしたことがある」
「え!? 何があったんだ……?」
「ゴールド博物館に行った時のことを、覚えているか?」
ゴールド博物館。
ウルフ王国の大きな財源になっている、ゴールドについて学べる博物館で、宮殿からは、車で二十分ぐらいの場所にある。博物館の周辺には、宿やお土産屋などもあり、観光地になっている。
「もちろん覚えているよ。お土産屋には、沢山の金細工が売っていたし、金粉を使った食べ物屋もあって、まさに観光地って感じだった」
「そうだな。まさに観光地だ。あの町には、観光客と地元民が使う、少し大きめの銀行があってな。今はもうないが、その銀行のディスプレイには、金塊が飾られていた。それはとても大きなもので、あのあたりのシンボルだった。その金塊を盗み出そうとした、強盗の一味がいた」
「え、待って、ベリル、それって……」
お読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『拓海は私のものだ』
です。
ベリル様!
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






