35:ものすごく怒っている……。
その瞬間。
モールの怒りが俺にも届いた。
ものすごく怒っている……。
モールの感情を感じ取るのは初めてのことで、驚いていると。
ものすごく小声で、モールが何か囁いた。
その声は俺の声であるのだが。
俺でさえ、聞き取れない。
突然、クラークが苦悶の表情を浮かべ、激しく尻尾と耳を動かし始めた。クラークの後ろにいるライカンスロープ達の顔が、青ざめている。
何事かと思うと、モールがとんでもないことを言い出した。
「クラーク、お前は風呂が嫌いなのか? そんなに尻尾にノミがいるとはな。入浴はとても気持ちがよいものなのに」
モール……。
地味な嫌がらせを……。
「やめろ、やめてくれ」
クラークは号泣している。
「なぜ、ベリルをさらったか、その理由を話せ、クラーク。ノミは嘘つきにたかるらしいぞ」
「シドニーが、ベリルという女ヴァンパイアに恨みがあると言っていた! シドニーのひいじいさんが、そのヴァンパイアのせいで刑務所に行きになったと!」
クラークが号泣しながら話し出す。
その間も尻尾と耳を激しく動かしている。
「復讐か?」
モールの問いにクラークは。
「恨みがあると言っていた。だから復讐だと思う……」
「バーバラ、記録停止」
モールの言葉にバーバラが頷き、撮影を停止する。
それを確認すると、ビデオカメラを受け取り、またも小声で何か囁いた。
その瞬間、クラークは力尽きたように尻尾と耳の動きを止めた。
「今後、もしベリルに手を出すようなことがあれば、全身にノミがたかるかもしれんな」
モールの言葉にクラークは絶句し、そしてノミにたかられる自身を想像したのだろうか。
気絶してしまった。
クラークの後ろにいるライカンスロープ全員が、無言で体を震わせている。そこでモールが動きを止め、何かの気配を伺う。
「拓海、お前の女が来たようだ」
ベリルか!?
「そのようだ。場をお前に譲る」
モールはそう言うと、手をパンパンと叩く。
その瞬間、その場にいたライカンスロープの呪縛は解けたようだ。
だが、誰も何もしようとしない。
どうやらクラークの姿を見て、完全に戦意を喪失したらしい。それが分かったので、俺はミランダに駆け寄った。
すると。
「動くな」
キャノスの声に振りかえった。
そこにはキャノス、ヴァイオレット、リマ、シナンそしてベリルの姿が見える。
少し離れた場所には、ミランダの二人の三騎士、さらにカイと彼の三騎士もいた。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『え、俺、なんか変?』
です。
多分、変なことに?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






