30:何が起きている?
結婚式の会場はどこもかしこも混雑していた。
ミランダ達を追うにも、沢山のライカンスロープを、かき分ける形になる。なかなかミランダに追いつけない。
途中。
ウルフ王国の警備兵がいたので、不審者に知り合いが連れ去られそうなので、追って欲しいと頼んだ。だが「詳しく聞かせて欲しい」と言われ、足止めを食いそうだったし、ミランダ達を見失いそうだったので、警備兵の協力は諦めた。
これでも俺は特別騎士だし、シナンは腕が立つ。
二人で挑めば、なんとかできるだろう。
それにミランダはジャスミンイエローの目立つドレスを着てくれているので、今の所なんとか見失わずに済んでいるのだから。
それにしても。
どう考えても、この広場から外へ出て行こうとしているように思える。追跡は俺とシナンでいいとしても、この事態を誰かに伝えた方がいいのではないか。
誰か知り合いがいないかと、何度か見渡すが、ライカンスロープはいても、ヴァンパイアの姿は見当たらない。
そこでふと思う。
ミランダはヴァンパイアだ。
魔術だって使える。
それを使わないということは、何か事情があるのだろうか?
ついに広場を出てしまい、駐車場に出た。
さすがに駐車場は、閑散としている。
「拓海様、あそこだ!」
シナンと一緒に駆け出す。
追跡しているとバレないように、車の影に隠れながら、距離を詰める。
するとミランダを連れたライカンスロープ達は、一台のバンのそばで止まった。
よく見ると、ミランダを連れたライカンスロープは、調理人の格好、結婚式の参列者のようなスーツと、見るからにこの結婚式の関係者と思われる姿をしている。
場当たり的な犯行ではなく、関係者と見える姿でこの会場に紛れ、ミランダを狙い、連れ去ろうとしていると分かった。
「拓海様、ストップ」
シナンに言われ、マイクロバスの傍で立ち止まる。
「敵は見えている限り……六人か。あの数なら俺一人でなんとかできる。拓海様はここにいてくれ。この辺りに敵の気配ない」
シナンがまさにミランダ達の方へ向かおうとしたまさにその時。
バンが開き、ミランダの三騎士の一人が、拘束された状態で降ろされた。
ヒドイ……!
三騎士の中で一番小柄で、アイドルみたいに可愛らしいその女性ヴァンパイア騎士は、口を粘着テープでふさがれ、両手は後ろ手に手錠が掛けられている。さらに翼を出せないようにするためか、ワイヤーでぐるぐる巻きにされていた。
あれではいくら怪力でも、力を出せば自身の体が切り裂かれてしまう。
現に散々暴れたのだろう。
あちこちが血まみれになっている。
三騎士は涙をこぼし、すまなさそうな顔でミランダを見ている。
ミランダの声は聞こえない。
でもその口元は「大丈夫よ」と言っているように見える。
つまりは三騎士の一人を人質にとられ、ミランダはここまで連行されたということか。
動きかけたシナンは一旦動きを止めていたが。
三騎士の女性ヴァンパイアが背中を蹴られ、地面に倒れたその瞬間に動いた。
まさにそれは電光石火。
曲刀を使った相手は一人だけ。
あとは足を払ったり、肘を使い、打撃技で瞬時にライカンスロープ達を沈めていく。
気づけばその場にいた六人が、地面に倒れている。
初めてシナンの戦闘を見たが。
さすが『ザイド』だ。
ボクシングをやっている俺だから分かる。
あの動きは本物だ。
すべて急所を的確に狙い、戦闘不能にしている。
異常に気づいたスーツ姿のライカンスロープが、バンの中から降りてきたその瞬間。
後頭部に鈍い痛みを感じ、目の前が暗転した。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『やたらけばけばしい』
です。
何が……?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






