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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
Episode6ウルフ王国結婚狂騒曲編

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26:うん!? 何をしている?

翌朝。


まるでこの時間に起きると決めていたかのように、パッチリと目が覚めた。


隣で眠るベリルを見ると、もう獣耳は消えている。掛け布があるから確認できないが、多分、尻尾も消えているのだろう。一定の時間が経つと、消えるという魔法のようだ。


サイドテーブルに置かれている時計を見ると、まだ6時前。


今日参加する結婚式は15時からだから、起きるのは7時。アレンが起こしに来るのも7時だ。二度寝を考えたが、すっかり覚醒してしまった。この状態で寝返りを何度もうっては、ベリルを起こしてしまうだろう。


しばし思案する。


そうだ、散歩に行こう。


ゆっくり起き上がり、ベッドから降りると、クローゼットから制服を取り出す。服を持ってバスルームに移動し、簡単に身支度を整える。


ベリルへのメッセージを残し、部屋を出た。


廊下を進むと、すぐに中庭へつながる回廊に辿り着いた。そこからそのまま中庭へと向かう。中庭には、長方形の巨大な池がある。その周囲を取り囲むように、美しい花や草木が植えられていた。


ルピナス、アネモネ、ムスカリ、ラナンキュラスなどが美しく咲いている。


池にはその花や木、その背後にある建物が映りこみ、巨大な水鏡になっていた。池のそばには等間隔で大理石のベンチが置かれており……。


!!


そこに俺はエクリュの姿を見つけた。


なんとなく目が覚めた理由。

それはここでエクリュに会うためだったのかもしれない。


少し早歩きでエクリュの元へ向かう。


エクリュはホリデーシーズンの別荘の時のように、スケッチでもしているのかと思ったが、手元には何もない。


よくよく見ると目を閉じ、口を動かしている。


うん!? 何をしている?


そう思ったまさにその時。

鳥肌が立つような美しい歌声が聞こえた。


ものすごい高音の声。

しかも精巧で繊細なのに、芯があって力強い。

そしてその声はエクリュが出している声であり、彼が歌っているのだと理解する。


スピネルがエクリュについて語った時、「特筆すべき点は芸術的なセンスが抜群らしく、癒しの歌声の持ち主で、そしてとても美しい絵を描くそうよ」と言っていたが、それは本当だった。


なんて美しい歌声なのだろう。


思わずそこに立ち止まり、歌い終わるまで聴いてしまった。


すると。


「拓海くん、おはよう」

「エクリュ様、おはようございます」


うっとりと閉じていた目を慌てて開け、エクリュのすぐそばへと歩み寄る。


初めて二人きりで会った時は、髪も肌も真っ白で、かつ全身白い装いをしていたので、雪の精のように思えた。そして今日のエクリュもあの日と同じ、白い綿のシャツに白のズボン姿だったが。


さっきの歌声を聴いてしまったので、その姿は天使のように思える。


「拓海くんと話したいと思っていたよ」

「俺もです、エクリュ様。隣に座っても?」

「もちろんだよ」


エクリュが座っている大理石のベンチは、五人ぐらいが腰かけられるものだった。少し距離を開け、エクリュの隣に腰かけた。


「拓海くん、今のベリル嬢は、とても幸せそうに見える。いや、間違いなく、幸せだ」


「エクリュ様から客観的に見て、そう見えるなら安心です」


「拓海くんだったのだね。ベリル嬢の気持ちを捉えていたのは」


エクリュは宝石のようなアメシスト色の瞳を、明るくなり始めた空へ向ける。


「その、あの時は、ベリルのことを好きなのかと尋ねられ、全力で否定してしまいましたが」


「分かっているよ、拓海くん」


「!!」


美しい瞳を俺の方に向けると、エクリュは微笑む。


「拓海くんはあの時、まだ自分の気持ちに気づいていなかった。ベリル嬢の騎士になろうと、頑張っている時だっただろう。……もしかしたらぼくがきっかけだったのかな? ベリル嬢への気持ちに拓海くんが気づけたのは」


エクリュの言葉に力強く頷く。

するとエクリュは、輝くような笑顔になる。


「それは良かったよ、本当に。ぼくはね、前にも話したかもしれないが、悲劇は芸術のモチーフでいいと思っている。悲惨な様子を客観的に見て、自身がいかに平和で平穏な世界にいるかを噛みしめる。自分がどれだけ恵まれているかと、再確認できる。それができるのは、その悲劇が芸術作品だからだ」


そこで一呼吸置き、エクリュが俺を見た。


「……まあ、こんなぼくの芸術論を聞いても、つまらないだろう。とにかく言えることは一つ。現実で幸せになれるなら、幸せになるに越したことはない。そしてベリル嬢は拓海くんのおかげで幸せになれた。それがすべてだ」


「エクリュ様……」


若干芸術家モードが入っているが。

言わんとすることは、なんとなく伝わってくる。

俺とベリルが結ばれることを、喜んでくれていた。

そう理解した。


「拓海くんとベリル嬢の婚姻の儀式が、楽しみだよ。新しい芸術のテーマを、見つけることができるかもしれない。ぼくのこと、忘れずに招待してくれよ」


「それはもちろんです!」


お互いに笑顔で話を終え、部屋に戻った。

お読みいただき、ありがとうございます!

次回更新タイトルは

『裸の付き合い』

です。

なぬ!?


それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。

明日のご来訪もお待ちしています!!

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