14:ベリルちゃん!?
謁見の後は、夕食会だった。
これは……ものすごいスケールだ。
ジャック国王は、ジュリア王妃との間に、16人の子供がいた。さらに側妃が三人いて、合計56人の子供がいた。そして72名の子供のうち、既に成獣となり、結婚している者もいた。さらにジャック国王には孫もいて……。王族だけで軽く100名以上いる。
そこに5つの有力ヴァンパイアが加わって着席をしていた。
しかもこの夕食会は、それぞれの三騎士や連れている召使いの同席も、特別に許されている。
だからもうとんでもない人数が、この大広間にいるわけで。
とてもではないが、名前と顔を覚えきれそうにない。
その結果、美味しい料理の数々でお腹も一杯になったが。
同じように沢山のライカンスロープを紹介され、頭の中も満腹になっていた。
そんな状況で夕食会が終わりに近づいた時。
隣に座るベリルが、そっと膝の上に置いていた俺の手を握った。
「拓海、大丈夫か? 兄上とバーミリオンは社交も兼ね、隣室に移動してワイン片手におしゃべりタイムになる。だが私達は、無理してそれに出る必要はない。なにせ明日から一週間、毎日結婚式に出席する。社交はそこでも十分できる。今日は移動もあったし、部屋でゆっくり休むので問題ないが」
「……本当はベリルも社交をした方がいいよな? 俺のせいで部屋に戻るのは……」
「そんなことはない。今日、無理をする必要はない。私は明日からのことを思うと、部屋に戻りたいと思っている」
ベリルが俺の手をぎゅっと握りしめた。
……ベリル!
「……じゃあ、部屋に戻って休むのでもいいか?」
「無論だ」
ルビー色の瞳を細め、微笑むベリルは本当に美しくて。そして俺の気持ちを汲んでくれる優しさに感無量になる。情報過多と満腹で、もう部屋で休みたいと思っていた俺は、肩の力が抜け、安心する。
こうして夕食会を終えると、部屋に戻るため、移動を開始した。
「まあ、ベリルちゃん!」
ベリルちゃん!?
驚いて振り返ると、そこには……。
ベリルは今、美少女に見えた。でも美女と呼ばれる姿になるとしたら、こんな姿では!?と思える女性が、こちらを見て手を振っている。
つまり、ベリルと同じ髪色と瞳の色、そしてレモンイエローのイブニングドレスを美しく着こなした女性が、そこにいた。
「ミランダお姉さま!」
ベリルがミランダという名の女性の元へ、駆け寄る。
すると俺とベリルの後ろについていたヴァイオレットが、ミランダのことを教えてくれた。
「ロードクロサイト様の奥方アンデシン様の実家である、ジョンブリアン家のミランダ様だ。ベリル様とは幼い頃から仲がいい。ミランダ様は、ジョンブリアン家の次期当主と言われている」
すると同じくキャノスがこう捕捉する。
「ジョンブリアン家は女系の一族で、男子になかなか恵まれない家系と言われています。ただ、産まれてくる女子は皆、美しいので、『輝きの乙女の一族』と言われているのです。ベリル様のお美しさは、ジョンブリアン家の血筋ゆえとも言われています」
さらにシナンまでこんなことを言う。
「『輝きの乙女の一族』と言われるジョンブリアン家に加え、レッド家は魔力が強い一族。強い魔力を持つ美しいベリル様は、ジョンブリアン家とレッド家の血筋が生み出した、まさに最高傑作のヴァンパイアということだ」
そして最後にリマがこう締めくくる。
「そんなブラッド国の至宝であるベリル様を、なぜか拓海が射止めたと」
「リマ、私はベリル様が拓海を選んで正解だと思っていますが」
「そうだぞ、リマ。拓海様はああ見えて、男の中の男だぞ」
「な、キャノス、シナン、何なのよ! もう、知らないっ!!」
リマがヴァイオレットに駆け寄り、キャノスとシナンが「やれやれ」と呟いたところで、ベリルがミランダを連れこちらへやってきた。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『な、なんて粒ぞろい。』
です。
拓海は誰に反応したのか?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






