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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode5】ポリアース国聖女降臨編

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68:あの時何が起きていたのか

「もう一体全体、何があったの!? 私、肝心なところが蚊帳の外だったのよ」


スピネルは赤ワインを手に頬を膨らませる。


「私も同じく、途中からその場にいなかったので、何が起きたのか気になります」


ノエルも白ワインを手に同意を示す。


「え、むしろ、二人がどこに消えたのか、それが気になる!」


リマはジンジャーエールを手にスピネルとノエルを見る。


今俺達はグレゴウス教皇の宮殿にいる。少し早めの夕食を終え、ソファのある隣室へ移動した。そしてあの時何が起きたのか、皆で話始めたところだった。皆というのは、ベリルと三騎士、スピネル、俺、そしてなんとグレゴウス教皇とノエルも同席している。


あの時。


そう、ハネス大司祭がグレゴウス教皇に反旗を翻した時のことだ。


そもそもとしてハネス大司祭が反旗を翻すのではないかという懸念を、グレゴウス教皇はもう何年も前から持っていた。


ハネス大司祭とグレゴウス教皇が最初に出会ったのは、まだ教皇が司祭の時で、大司祭は信者の一人に過ぎなかった。


ハネスは当時、最愛の妹を失い、失意に暮れていた。救いを求め、教会に足へ運んだ。


そう、あの碧い教会へ。


そしてそこで当時司祭だった教皇と出会い、自分の悩みを打ち明けた。


ブラッド国が、ヴァンパイアが憎くて憎くて仕方ないと。


グレゴウス司祭はその時、ハネスの話を何度も何度も聞き、その胸のうちに渦巻く黒い憎しみを鎮めていった。やがてハネスの心は癒され、純粋な気持ちで聖職者を目指すようになる。


しばらくは穏やかな時間が流れていた。


だが反ヴァンパイアや反ライカンスロープの動きが度々起きるようになり、次第にハネスの心に暗い闇を落としていく。


それでもグレゴウス教皇とハネス大司祭は、20年以上の付き合い。グレゴウス教皇は何度となく、ハネス大司祭と話し、その闇を祓おうと腐心していた。


だから。


ブラッド国から、レッド家から、悪魔祓いの相談があった時。


グレゴウス教皇は、ハネス大司祭のことをロードクロサイトに伝えていた。


悪魔祓いは請けても構わないが、ヴァンパイアに対して、恨みを持つ者は教会内でもゼロではないことを。


ロードクロサイトはそのことを、もちろんベリルに伝えていた。


だからベリルは大事をとって、街中の宿ではなく、国使館を使うようにした。ハネス大司祭の動きには、目を光らせていた。だからこそ、グレゴウス教皇との初対談での一幕、碧い教会のあの部屋に踏み込んだ時も、ハネス大司祭の意図に気づくことができた。


ただ、今日の悪魔祓いの一件は、ベリルにとっても驚きだった。


まさか俺がモールと対話するとは思っていなかったし、その内容も予想外。


俺としてはノエルが責められないようにという一心で、ハネス大司祭もいるあの場で、モールと何を話したか打ち明けてしまったのだが……。


本当は先にベリルにだけ相談すべきだったと思う。そうすればこの情報により、ハネス大司祭がどう動くか、また自分達はどう対応するのか、戦略を練ることができただろう。


でも俺は洗いざらい話していた。正妻や愛妾の件をのぞき。


しかし結果的にハネス大司祭は自身の本心を明かし、グレゴウス教皇に短剣をつきつけ、反逆の姿勢を明確に示すことになった。


これまで親心のような気持ちでハネス大司祭を見守ってきたグレゴウス教皇も、さすがにこの一件で彼を捕らえることを決めた。何より、軽い傷であるが、ノエルは怪我をしている(キャノスの治癒の魔法ですでに傷は癒えている)。捕えられたハネス大司祭は、幽閉されることになった。彼の協力者だった聖騎士と共に。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!

本日もゆるりとお楽しみください。

2話目は8時台に公開します。

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