48:誰かに譲るつもりはないな
移動遊園地は、俺が知る通常の遊園地と変わらないアトラクションとスケールだった。
空中ブランコ、メリーゴーランド、ミラーハウス、コーヒーカップ。
リマが次々に乗りたいアトラクションを選び、俺達はそれについて行った。
アトラクションでテンションが上がっていたリマは、俺がベリルと手をつないでいても、全く気にしない。
それはそれでよかったのだが、気にしなさ過ぎて、こんなことを言い出した。
「最後は観覧車ですよね、ベリル様!! 一緒に乗りましょう」
観覧車と言えば、カップルで乗る定番のアトラクションだよな!?
なぜ、女子同士で乗る必要が!?
「リマ、俺と乗らないのか?」
シナンがナイスフォローしてくれたと思ったら。
「なんでシナンと観覧車を乗らなきゃ行けないのよ。絶対にイヤ。ベリル様がいい!」
リマはがっつりベリルの腕に、自身の腕を絡めている。
誰かに譲るつもりはないな。
それはシナンも分かったようで、俺のそばを通り過ぎる瞬間、「観覧車は一度しか乗れないわけではないぞ、拓海様」そう言うと、スピネルの所へ向かった。
なるほど。
ベリルと観覧車に乗り、リマが満足したら、俺が再度ベリルを誘えばいいのか。
俺は納得し、リマとベリルが乗る観覧車を見送り、そのまま待つつもりでいたのだが……。
リマはみんなで乗ろうと譲らず、俺はキャノスと乗ることになった。シナンはちゃっかりスピネルとヴァイオレットと乗っている。
「キャノス、なんか俺と二人なんかですまないな」
「いえ、別にこれはデートではなく、一応私にとって任務ですから。……本来、拓海を警護するシナンは、ヴァイオレットやスピネルではなく、拓海と乗るべきなのですけどね」
そう言って苦笑する。
キャノスの言う通りなのだが、シナンがそうしないことを、なぜか俺もキャノスも許せてしまう。
シナンは女子の懐に入り込むのが上手いというが、それは男子に対しても同じような気がする。
何はともあれ、観覧車がスタート地点に戻った。
先に降りていたベリルの所へすぐ様向かう。
そして。
ベリルの前で片膝をついて跪き、手を差し出す。
「ベリル様、俺と二人で観覧車に乗りませんか」
「!!」
リマが目を丸くし、でも頬赤くしている。
「喜んで」
ベリルは俺の手に自身の手を乗せる。
今まさに観覧車から降りてきたシナンは、口笛を吹いて俺を見送る。
「! ベリル様が乗るなら、我々ももう一度乗るぞ! おい、シナン、ちゃんと拓海の警護をしろ」
ヴァイオレットがシナンの肩をぐいっと掴み、俺達の後に続く。
「え、だったらあたしもお供します!」
リマがヴァイオレットの後を追う。
「あらあ♡ いいわね。恋人同士の観覧車」
スピネルはひらひらと手を振り、ベリルと俺を見送った。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『あとは唇を重ねるだけ……。』
『愛らしい姿にメロメロ』
です。
ドキッドキッ展開。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






