38:半信半疑
悪魔祓い。
それは元いた世界で、映画で見たことがあるが、とても自分ができるようなものではないと分かっていた。だから当然、それはグレゴウス教皇とハネス大司祭に伝えている。
何より悪魔に憑依された人の姿が、映画ではとても恐ろしい姿で描かれており、自分では対応できないと思った。
だが……。
グレゴウス教皇は俺達に言ったのと同じことをノエルにも話した。
「我々が行う悪魔祓いは、基本が対話です。憑りついた悪魔の名を聞きだし、何のために憑りついたのか、何をしようとしているのか。それを聞きだし、その企みは実現しないこと、主はその企みを認めないことを教えます。そしてその体から去るように命じます」
本当にそれだけなのか。
半信半疑だった。
でも「一度でいいから、試して欲しい」と請われ、グレゴウス教皇とハネス大司祭立ち合いの元、悪魔祓いを希望する若い女性と会うことになった。
映画のシーンが思い出され、ノエルは戦々恐々だ。
しかし。
その若い女性は、暴言を吐いたり、暴力振るったり、突然叫んだりすることもない。
ただ、落ち着きがなく、常にソワソワしていた。
そこで根気よく対話を続けることになった。
対話を初めて一週間。
その女性は悪魔と思われる者の名をノエルに明かす。
さらに一週間後、その女性で何をしようとしているのかも、打ち明けたのだ。
ノエルに明かされた名前と企み。
その名が本当に悪魔なのか、悪魔がしようとしている企みなのか、ノエルに分からない。
でも、その若い女性は婚約者から突然婚約破棄され、とても傷ついていた。
彼女から婚約者を奪った女のことを恨んでいた。
だから。
悪魔がとりついたその若い女性は、婚約者を奪った女に復讐をしようとしていた。
その復讐を企みとして、ノエルに明かしていたのだ。
そしてノエルは、グレゴウス教皇に聞いた通り、その女性に対して告げた。
その企みは主が知るところとなった。
その企みを主は認めることはないと。
さらにその体から去ることを主が命じていると伝えると……。
若い女性は落ち着きを取り戻した。
表情も穏やかになり、その後の対話でも悪魔の名が出ることはなく、企みのことを口にすることもない。
これで終わったのだろうか? 悪魔祓いはできたのだろうか?
ノエルがグレゴウス教皇に尋ねると……。
「成功です。悪魔は去りました。あの若い女性は、もう婚約者を奪った女性に復讐をすることはないでしょう」
そう告げられて初めて、ノエルは悪魔祓いが成功し、終わったことを実感する。
できないと思った悪魔祓いは成功した。
以後、ノエルは聖水薬と万能膏による手当と人生相談。
たまに持ち込まれる悪魔祓いに対応するようになった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『瓢箪から駒が出る』
『近所に住んでいるお姉さん』
です。
ノエルが聖女になった理由が明らかになったが……。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






