26:フローライトみたいな女性?
「会ったことはない。俺は信仰心が篤いわけではないからな。ただ、『ザイド』には幅広い知識が必要だから。癒しの聖女がどんな人物かは把握しているわけだ。癒しの聖女は、5年前に突如ポリアース聖教会に降臨したと言われている。とても美しく、清く、優しい心の持ち主で、ポリアース聖教会を訪れる人々の怪我を癒したらしいぞ。人々の悩みに耳を傾け、適切な助言を与え、多くの人を救った。その結果、3年前に、グレゴウス教皇から正式に『癒しの聖女』の称号を与えられそうだ。それ以前は、癒しの乙女と言われていたらしい」
怪我を癒す。そして美しく、清く、優しい。
頭の中でフローライトの姿が浮かぶ。
ストロベリーブロンドの長い髪に、桜色の瞳と唇。
ピンクベージュのベール、同色のエプロン、長袖のムーングレイのワンピース。
背中に白い翼をつければ……。
癒しの乙女という呼び名も、フローライトにピッタリだ。
それにしても。
フローライトはヴァンパイアだから魔術を使えた。
癒しの聖女も何か力を使えるのだろうか?
というか、降臨したって、どういうことだ? 神なのか……?
「なあ、シナン。降臨したって、どういうことだ? 癒しの聖女って人間なのか? 怪我を癒したって、魔法でも使えるのか?」
「降臨……ポリアース聖教会の公式発表では、天から降りてきたらしい。人間かどうか。それは突き詰めてはいけない件だと思うぞ、拓海様。聖女は聖女だ。それ以上でもそれ以外でもない。ただ、魔法を使えるという話は聞いていない。なんでも聖水薬なるものと、怪我につける万能膏なるものを使って怪我を癒したらしい。それはブラッド国やウルフ王国にも伝わったと聞いている」
「なるほど……」
天から降りてきた、となると、天使なのかな?
でも怪我を癒すのに使われている物は、なんだか魔法薬みたいな感じだ。
異世界だから、なんか手を当てて、光の力で癒します、みたいなのを想像したけど……。
ちょっと違うのかな?
しかし、怪我を治せても、悪魔を祓えるのだろうか?
「癒し」と「祓い」は別物に思えるのだが……。
そんなことを思っているうちに、車はポリアース聖教会の敷地に入り、グレゴウス教皇が住まうエトロ宮殿に到着した。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『魔力を使わない?』
『いつも綱渡り』
です。
いよいよ到着。さあ、どうなる……?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






