22:ポリアース国
飛行船が着地したのは、ポリアース国に置かれているブラッド国の国使館と呼ばれる、元いた世界でいう大使館の広大な敷地の中だった。
ポリアース国とブラッド国では交易も行われ、ブラッド国のヴァンパイアが観光でポリアース国へ訪れることもある。もちろんポリアース国に暮らしているヴァンパイアもいた。
数は少ないが、その逆もある。つまり、ポリアース国の人間が観光でブラッド国を訪れたり、ブラッド国に暮らしたりもしていた。
だが、ウルフ王国とブラッド国のような友好関係にあるかというと、そうではない。どうしても、ポリアース国からすると、ブラッド国とは距離を置きたいとなる。
それはそうだろう。
召喚により供物にされることがあるわけだから。
それでも召喚で供物になる人間は、病気や死を願う者と、ブラッド国では説明をしている。それに必要な時だけ供物として召喚しており、不必要な召喚はしていないと伝えているという。
だがポリアース国の人間からしたら、そんな事情は関係ない。とにかくヴァンパイアは自分達の血を吸うということで、どうしても嫌ってしまうようだ。
だから。
テルギア魔法国のように、自由には動きにくい。
もちろん、人間に襲われたところで、ヴァンパイアが負けることはないのだが。
ただ、そこで人間を倒してしまうと、外交問題に発展してしまう。よって今回は国使館に用意された客室に滞在し、ここを拠点に動くということだ。
もちろん、ヴァンパイアであることを隠していれば、ポリアース国でもかなり自由に動ける。現にブノワは国使館に滞在することなく、ポリアース国で生活していた。
人間とヴァンパイア、見た目に変わりはほとんどない。牙は魔力を調整することで、隠すこともできるという。つまり牙ではなく、犬歯に見えるよう、魔力で調整できるらしい。
ただやはりベリルのようなワイン色の髪、そしてルビー色の瞳は、ヴァンパイアならではの色。変身魔法を使ったり、変装しないと、人間ではないとバレてしまう。
もちろん、変身魔法や変装を使うこともできた。だが今回は聖職者に悪魔祓いをしてもらうという明確な目的があり、迅速に進めたかった。
余計な心配事を抱えたくなということで、国使館を使うことにしたのだ。
しかもロードクロサイトが正式に依頼を出したことで、ポリアース国で一番大きい、ポリアース聖教会による悪魔祓いを実施してもらえる手はずもついている。
さらにポリアース聖教会で、悪魔祓いに一番精通した聖職者が、今回協力してくれるというのだ。
「ベリル様、お待ちしていました」
飛行船を降りると、国使館の国使であるモーリスとその秘書の女性、警備の騎士が迎えに来てくれた。
ベリルは俺達のことをモーリス国使に紹介し、その間にキャノスは飛行船に縮小魔法をかけ、手の平サイズに変えてしまう。
互いの紹介をしている最中に突然飛行船が消え、モーリス国使は一瞬目を大きく見開き、固まっている。だがすぐに我に返り、俺達を国使館内にある客室へ案内してくれた。
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次回更新タイトルは
『誘うように煌めいている』
『抗いがたい気持ち』
です。
なんだかドキドキ
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