76:スープは久々だ!
「はーい、拓海様、起きてください。起きないと鼻からスープを流し込みますよ」
!! スープは久々だ!
飛び起きるとアレンが着替えを持ってニコニコしている。
あれ、スープがない?
「これから昼食代わりのアフタヌーンティーです。皆さま、もうお揃いですから、今すぐ着替えてください」
チラッと横を見る。当然だがベリルの姿はない。
またも俺だけお寝坊くんだ。
アレンから着替え――隊服を受け取る。
「あれ、いつもの高校の制服は?」
「アフタヌーンティーの後、カトラズへ行くそうです。なんでも拓海様の赤い宝石の件でスティラ様に確認したいとか。ベリル様は起きるなり、スティラ様に連絡を取り、約束をとりつけていました」
「そうだったのか」
アレンは着替える俺に順番に服を渡してくれていたが、最後にネクタイを整えると。
「では参りましょう」
そのままダイニングルームへ向かう。
既に俺以外の全員が着席している。
カトラズに行くからキャノス、ヴァイオレット、リマは隊服姿だ。
そしてベリルは……。
珍しく明るい黄色――ミモザ色のドレスを着ている。
パコダスリーブのドレスは、袖の部分が白いレースになっている。
大きく開いた胸元も袖と同じ白いレース。
首元には、ファンシー ヴィヴィッド イエロー ダイヤモンドのネックレス。
髪は綺麗にアップされている。
本当にベリルはいつ見ても美しい。
今なんてまるで絵画で描かれている貴婦人みたいだ。
見惚れる俺に気づいたベリルが微笑を向ける。
それだけでもう、とろけそうだ。
「拓海さま、座ってください」
アレンに言われ慌てて着席すると、カレンがカップを上向きにし、紅茶を注ぐ。
「さて、全員揃ったからアフタヌーンティーを始めよう。それでさきほどの続きだが、キャノス」
紅茶を口に運びながらベリルがキャノスに視線を送る。
「はい。ベリル様。魔法についてですが、呪文の詠唱は必須です。つまり、魔法をかけることにおいては呪文が必要ですが、かけた魔法の解除では、呪文が不要な場合があります。例えば縮小魔法。魔法をかける際、どのような条件でそれが解除されるか、それは魔法をかける際に指定が可能です。例えば拓海のツヴィークに縮小魔法をかけた時、その解除条件は『鞘から抜いた時』」
キャノスの答えを聞いたベリルは、カップをソーサーに戻し、尋ねる。
「なるほど。となると考えられることは、赤いアベンチュリンは魔法石で、拓海がモールと名付けた怪力を持ち魔術を使える者が閉じ込められていた。心の中で名前を呼ぶことが、魔法石から解放される解除条件だった。そして解除と同時に拓海に宿った?」
スコーンにジャムを塗りながら、ベリルがキャノスを見た。
「その可能性もありますが、やはり心の中の声で解除は難しいかと。聞いたところ、拓海は赤いアベンチュリンを胸ポケットにいれていたとのこと。そしてとても危機的な状況にあった。ある程度の激しい心音に反応して解除される。もしくはある量の汗に反応して解除される。この辺りが解除条件ではないかと」
「そうか」
頷いたベリルがスコーンを口に運んだタイミングで声をかけた。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『すごいニュースが飛び込んできた』
『呆気に取られ、頷くしかない。』
です。
知らぬ間にとんでもないことが起きていたー!
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






