68:三文芝居
魔術の効かない体質がいたことは想定外だったが、部屋に案内し、寝かせてしまえばいいと考えた。リマが寝ている間に、事をすすめればいいと。
今回、『アマゾネス』の描いたシナリオ。それは……。
ベリルはオックス家の夕食会に訪れ、泊ることになる。そこで遅くに帰宅した長男ルビオと偶然出会い、一目惚れしてしまう。婚約者がいながらも気持ちが盛り上がり、二人は一線を越えてしまった。
既成事実と『誕生の証』を天秤にかけた時、既成事実が優先されると考えた。
つまり、ベリルはルビオと結婚することになる。
するとオックス家はレッド家と婚姻関係のある一族となり、地位も名誉も格段に向上する。財政的な支援だって取り付けられるだろう。それを引き換えに『アマゾネス』に協力したことを、オックス夫妻に黙らせるつもりでいた。
一方、物見塔での様子を見ても、ベリルと俺は愛し合っていることは明確。ルビオと関係を持ってしまったと気付いたベリルの心は壊れ、抵抗することなく、ルビオとの婚姻を受け入れる。そして失意のベリルは執務どころではなくなり、レッド家は急速にその力を弱める。
最終的に依頼主のこともバレず、『アマゾネス』による犯行ともバレず、幕を閉じる。
なんとも三文芝居みたいな話だが、これでうまくと思っていたのだから、驚きだ。でも実際に実行したら、途中まではうまくいった。
だがベリルは変な魔法薬を発動させられても、なんとかそれを制御し、魔術を行使した。それがあのマルコが連絡してくれた火災だ。でもその後すぐ、声が出なくなる魔法薬と体を痺れさせる魔法薬により、魔術を封じられ、身動きがとれなくなってしまう。
ただ、火は延焼し、鎮火に追われ、さらに離れに移ることになる。それは俺達が到着するまでの、時間稼ぎになってくれた。さらにさすがに火災でリマが異変に気づき、動き出したので、母屋は戦闘状態に突入する。そうこうしているうちに俺達が到着し、後は……、というわけだ。
リズが語ったのはここまでで、依頼主が誰であるか、それはペネロペしか分からないという。
依頼主の情報はどんな時でもペネロペのみが把握しており、それは例え部下であっても明かさない。それがペネロペなりの流儀のようだ。
だが、その犯人が誰であるか、それはこの後宿に戻ってから判明する。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『結局徹夜』
『全員呆気に取られ、沈黙』
です。
アマゾネスに仕事を依頼した人物は……。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






