56:暗躍する一味
ベリルの三騎士が尋ねているのに、訪問を断るなんて、おかしい! キャノスが引き下がるのも納得できなかった。その件を問おうとすると……。
「先ほどの門番は、魔術の効かない体質でした」
「えっ……」
「門番との会話を終えた後、ちょっとした魔法を試したのですが、通用しませんでした」
「そう、なのか……」
オックス家の方を見ながら、キャノスはふうっと息をはくと、口を開いた。
「拓海には黙っていましたが、サイレントヴィレッジに着いてから、実は暗殺者をシナンが何人か始末しています」
あまりにも驚いて、言葉が出ない。
「シナンによると、その暗殺者は『アマゾネス』と言われる女性のみで構成される暗殺組織の者で、五人一組のチームで動くのが常と言われています。シナンはその五人をすべて始末したと言っていたのです。だから、もう暗殺者はいないと思っていたのですが……。何しろ『アマゾネス』は雇うのにとても高額な報酬を要求するので、そう簡単に何組も雇うことはできないと言われています。ちなみに高額な報酬を要求する理由、それは他の暗殺組織が断るような仕事も請け負うからです」
キャノスはそこで街の方を見て目を細める。
「門番はおそらく『アマゾネス』の暗殺者。もう一人の門番もきっとそうでしょう。ただ、私達が屋敷を出て以降、侵入者はいない。となると、屋敷の中に三人の『アマゾネス』が既に侵入していた可能性があります。そしてその『アマゾネス』の暗殺者が、爆発を起こした可能性、これが浮上してきました」
「……ベリル達は……?」
「ベリル様とヴァイオレットは眠そうにしていました。もしかすると、なんらかの薬を、夕食の時に盛られた可能性があります。まだ確信をもてませんが、ブリタ夫人が『アマゾネス』に協力していた可能性も……。理由は……まったく分かりませんが」
まるで殴られたような衝撃を受ける。
優しそうなお母さんに見えたブリタ夫人が、『アマゾネス』に協力していた……?
「今、振り返ると、ブリタ夫人の様子がおかしいと感じる部分はありました。でもそれは当主であるハンヌが不在のため、緊張している。そんな風に思ってしまいましたが……。ただ、リマはまったく眠そうにしていませんでした。よって盛られた薬は、魔法薬なのかもしれません」
リマは魔術の効かない体質だから、魔法薬が作用しなかった、というわけか。
「『アマゾネス』はどんな仕事も請け負いますが、仕事が一流、というわけではありません。つまり、暗殺術に関して言えば、『ザイド』の方がうんと格上です。シナンの腕が一流というのもありますが、シナン一人で五人を相手にして倒して切っているのです。リマ一人でも、三人の『アマゾネス』ぐらいなら倒せていると思います」
そうかもしれない。
そうだとしても。
やはりベリルの無事を確認しないと、落ち着くことなんてできない。
「キャノス、門番を倒して、敷地内に侵入しよう」
「落ち着いてください、拓海。もし『アマゾネス』の目的が、ベリル様に何かすることであれば、それが終われば立ち去っているはずです。でもまだ門番に扮した『アマゾネス』はあの場にいます。ということは、計画はまだ完了していない。ならばその計画を阻止するために、慎重に屋敷へ侵入する必要があります」
「でも、どうやって?」
「こうやります」
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『嫌な予感に、背中に汗が伝う』
『何が起きている!?』
です。
キャノスは何をするつもりなのか!?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






