40:俺は絶対、美少女はイヤだからな
シェフが用意してくれた料理は、俺が知る感覚で表するなら、エスニック料理だ。
前菜として出されたのは、小麦粉の生地の中に挽肉と香草を入れ、揚げたもの。外はカリッとして中の具は香草が効いてなんともエキゾチック。
スープはまさにトムヤムクンスープ! 海老の代わりに湖でとれる白身魚が入っている。酸味も効いてピリ辛でたまらない。
メインとして出されたチキンは、複数のスパイスで味付けされており、なんというかやみつきになる。もしおかわりできるなら、おかわりしたくなるぐらい美味しかった。
チキンと一緒に出されたのは、ニンニクやトウガラシが効いたチャーハンのような焼き飯。肉や野菜の下味がスパイシーで、これまた絶品だ。
食後のデザートは、丸いドーナツのシロップ漬けという、初めて食べるものだった。俺には甘すぎだったが、ベリル達女性陣と、アレンとカレンは大喜びで食べている。
和やかな夕食が終わり、スタッフが片づけをしていると、コンシュルジュからものすごい手紙の束がベリル宛に届けられた。
サイレントヴィレッジに暮らす貴族から、晩餐会、夜会のお誘いが山のように届いていたのだ。
皆で手分けして届いた手紙の中身を確認した。
「今回はオックス家で夕食の約束をしているが、それ以外は遠慮すると事前に告知していたのだが……。こういったものはどれに参加した、していないで問題になるからな。申し訳ないがアレン、カレン、断りの手紙を用意してもらえるか?」
「かしこまりました、ベリルお嬢様」
双子の召使いは揃って返事をする。
「ベリル様、そのオックス家から夕食の招待状が届いています」
ヴァイオレットが手紙をベリルに渡す。
「……? ブリタ夫人とはメールで連絡をとっていたのだが」
首を傾げるベリルに、ヴァイオレットが応じる。
「未だ正式な招待には手紙を、と考える家も多いですからね」
「……まあ、そうだな。伝統のある一族は形式を重んじるからな」
そう言いつつも、招待状を見たベリルは……。
「明後日の夜か。候補日の一つだった。よし。私もこの日でいいと手紙を書こう」
「ではその手紙はお届けしておきます!」
アレンがキリリとした表情で告げると、「ああ、頼む」とベリルは微笑んだ。
「ベリル様、明日はどうされますか?」
ヴァイオレットが尋ねるとベリルは「そうだな」としばし考え、口を開く。
「午前中は執務に当てたい。午後は観光をしようか。宝石博物館とこの土地ならではの花が見られる植物園があったはずだ」
「承知しました。……変装を、されますか?」
「そうだな。今日のようなことがあると身動きがとりづらくなるからな」
ヴァイオレットに聞かれたベリルはそう答えると、キャノスを見る。
「変身魔法を使いましょう。……今回、拓海は……」
キャノスがチラッと俺を見た。
「お、俺は絶対、美少女はイヤだからな。できればキャノスみたいなイケメンにしてくれ!」
イケメン希望宣言をしたところでお開きとなり、各自部屋に戻った。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『やっぱ思春期ですから俺……』
『服を脱がせる経験なんてないのだから!』
です。
明日は一体どんな展開……?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






