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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode4】デスヘルドル波乱の予感編

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37:完全にモブで、即死しそう

トロールはもうこの世界にいないのかと俺が尋ねると。

キャノスが静かに語り出した。


「さすがに私もその時代を生きたわけではないのですが、遥か昔、ティストラン大陸には四つの国しかありませんでした。魔法使いが暮らすテルギア魔法国、人間が暮らすポリアース国、死者が暮らすデスヘルドル、そして魔王が統治するマール魔王国。ある時、魔王は大陸を一つに統一しようと考えました」


魔王……!

すごい。異世界っぽいぞ。


「デスヘルドルは死者の国なので、放置され、まずはポリアース国、次にテルギア魔法国を滅ぼそうと魔王は考えたそうです。最初、テルギア魔法国は対岸の火事とばかりに、魔王の侵攻を受けるポリアース国を傍観していました。でも、ポリアース国の次はテルギア魔法国が攻め込まれるとようやく気づき、その後は魔法使いと人間が手を取り合い、連合軍が組まれます。この連合軍に力を貸したのが、ヴァンパイアとライカンスロープの一族でした。この二つは共に魔族であり、本来は魔王に従う立場だったのですが、反旗を翻したのです」


キャノスの話に驚く俺に、シナンが問いかける。


「なぜ、ヴァンパイアとライカンスロープが連合軍についたか、拓海様はお分かりになるかな?」


「……まったく、わかりません」


シナンはニヤリと笑い、解説する。


「ヴァンパイアにとって、人間は供物だ。でも魔王は人間を一人残らず消し去ろうとしていた。そんなことされたらヴァンパイアも滅んでしまう。そしてライカンスロープの一族は、もちろん同族同士で繁殖してきたが、人間と婚姻を結ぶ者も多かった。人間の血がある程度混じっていないと、ライカンスロープは人型を保てないからだ。だからライカンスロープも人間を滅ぼされてしまうと、ただの狼に成り下がってしまう。だからこの二つの種族は、魔王に反旗を翻したのさ」


「なるほど。それで連合軍と魔王軍との戦いは?」


シナンとキャノスを見ると、キャノスが口を開いた。


「それは激戦に次ぐ、激戦。熾烈な戦いが繰り広げられたそうです。それでも最後は連合軍が勝利を収め、魔王は処刑されました。魔王軍についていた、トロールの一族も滅びています。その後、マール魔王国は解体され、ブラッド国とウルフ王国がそれぞれ誕生したのです」


「そうなのか。なんか、すごいな……」


まさにザ・ファンタジーな世界が、このティストラン大陸で繰り広げられていたのか。


魔王軍対人間・魔法使い・ヴァンパイア・ライカンスロープの連合軍との戦い。なんだかゲームや映画にありそうだし、思わずワクワクしてしまう。


もし今がそんな時代だったら……。

ロードクロサイトとゼテクは、さしずめ連合軍で双璧をなす総大将か。ベリルやカーネリアンが指揮官で、三騎士達は精鋭として戦場を駆け抜ける。アランやカレンも剣を手に戦ったりするのかな。スピネルとフローライトは戦場の天使だ。傷ついた兵士を助ける。


『ザイド』のメンバーは隠密行動で魔王軍を攪乱する。そして俺は……。俺は……うーん、完全にモブで、即死しそうだな。


「それでは皆さん、そろそろ帰りましょうか」


スティラの声に我に返る。


「なんだか拓海、楽しそうな顔をしていましたね」


キャノスがこちらを見て微笑む。


「あ、うん。なんか今がそんな戦乱の時代だったら、みんな大活躍だろうな、って思って」


「あはは。拓海、何を言い出すのかと思ったら。でもそんなゲーム、ありますよ」


「本当に!?」


そんなことを話しながら歩いていると。

何かを蹴っ飛ばした。

石ころでも蹴ったのかと思い、地面を見ると。

!!

これは赤いアベンチュリン!!

アベンチュリンは鉱石だ。その辺に落ちていてもおかしくない。


素早く拾い上げる。


「どうしました、拓海?」

「見てくれ、キャノス」


手の平にのせた、ウズラの卵ぐらいのサイズの赤いアベンチュリンをキャノスに見せる。


「これはすごいですね。赤の発色といい、中で輝く砂のような金の輝きも、とても美しい。何より形がこんなに綺麗なのは驚きです」


「そうか。確かに。これって研磨されたのかな? 誰かの落とし物?」


首を傾げながらキャノスは考え込む。


「どうでしょう? でも川の流れでゴツゴツした石も滑らかで丸い石になりますからね」


「そっか……。でも、もし落とし物だったら、勝手に持っていかない方がいいよな?」


キャノスを見ると……。


「基本はそうですね。でもこの国境にくるヴァンパイアなんて、滅多にいません。落とし物というのは……違うかもしれません」


再び、手の平の赤いアベンチュリンに目をやる。


「とりあえず幽閉施設に戻ったら、スティラに渡すといいのでは? 落とし物なら、わざわざここに取りに来るより、幽閉施設で受け取れる方が楽でしょう」


既に女性陣は馬に乗っている。ひとまずコートのポケットに赤いアベンチュリンをしまう。キャノスと俺は駆け足で馬の方へ向かい、急いで騎乗の準備をした。

昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!

この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!

本日もゆるりとお楽しみください。

2話目は8時台に公開します。

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