31:ヤバイ。大変色っぽいです
部屋に戻ると、キャノスと順番にシャワーを浴びた。
先にシャワーを終え、宿で用意されていた雑誌をペラペラめくっていると、キャノスがバスルームから出てきた。
「拓海、ベリル様のところに行かないのですか?」
当たり前のように言われ、ドキッとしてしまう。
そして思わず尋ねる。
「キャノス、テルギア魔法国の時は、俺にベリルの部屋に行くよう、積極的にはすすめなかったよな。でも今回は……シナンが初対面のベリルに絡んだ時、そして今も……。なんかキャノスの対応が変わった気がする」
するとキャノスはクスクスと笑った。
「だって拓海はもうレッド家が公認するベリル様の婚約者。拓海様がベリル様の隣にいるのは当然ですし、同じ部屋で眠っても……もちろん、婚儀まで守るべきものは守っていただければ、問題ないと考えています」
「な、なるほど」
ということは、テルギア魔法国の時のように、なんとなく気を使う必要はないのか! ベリルの部屋には用事がある時以外は行かない、なんてことをしなくてもいいのか……!!
「私のことは気にせず、ベリル様の部屋に行っていただいて構わないですよ」
「そっか。……ではお言葉に甘えて」
本当はベリルとスキンシップしたくてウズウズしていた。
今日一日、あの細い路地で急に抱きつかれた以外は、何もなかったからな……。いや、手はつないだか。あ、バスでは朝陽が出るまで肩を寄せ合っていたか。
……結構イチャイチャしている……?
でもまあ、いくら触れ合っても足りないぐらいだ。
キャノスに手を振り、ベリルの部屋に向かった。
確か、こっちだったよな。
リビングを抜け、廊下を進み、突き当りのドアをノックする。
「ベリル」
ドキドキしながら、ベリルがドアを開けてくれるのを待つ。
バスルームに用意されていたシャンプーは、バニラみたいな甘い香りだった。ベリルを抱きしめたらあの甘い香りがするのかな。
思わず頬が緩む。
今日はネグリジェか、バスローブか。
ネグリジェもいいけど、バスローブもいいよな……。
というか、ベリル、まだ入浴中か?
再度ノックし、名前を呼ぶが……。
反応がない。
まさか、寝ている!?
そうっとドアに触れると……。
!!
開いている。
入ったら怒られるだろうか?
どうしよう。
でも悪さをしなければ……。
1分ぐらい迷い、迷うぐらいならと、部屋に入る。
部屋は間接照明で薄暗く、カーテンは閉じられていないので、美しい夜景が目に飛び込んできた。
通路を進むと……。
……!
キングサイズのベッドに、ベリルが横になっていた。
真っ白なシーツの上に、ベリルのワイン色の髪が広がっている。
白いバスローブを着ていることから、既にシャワーは終えているようだ。
お風呂上りに眠ってしまったのだろうか?
あ、ディナーでは結構ワインを飲んでいたから、酔っぱらってしまったのか。
ヴァンパイアは寒さに強いとは聞いている。
だとしても……。
俺がこんな風に寝ていたら、ベリルなら必ず枕に頭をのせ、掛布団をちゃんとかけてくれるはずだ。
今日は俺がそうする番だ。
ベッドに近づき、改めてベリルを見ると……。
……ヤバイ。大変色っぽいです……。
バスローブの紐は緩く結わかれているせいか、胸元から谷間が見えている。しかも斜め右をむいていて、綺麗なうなじも見えている。
呼吸にあわせ、バスローブに包まれた胸が緩やかに上下している。
急激に心臓が早鐘を打ち始めている。
こんな無防備なベリルに触れていいのか、俺は……。
何度か深呼吸を繰り返し、まずはどうやって体を動かすか考える。
一度端に体を移動させ、掛布団をめくって、その後お姫様抱っこか。
頭の中でシミュレーションし、ベッドにのっかり、首と膝の裏に腕を差し込んだ時。
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2話目は8時台に公開します。






