31:異世界での俺の日常
翌日以降、ベリルは相変わらず一日中会議で、俺は俺で騎士たちの訓練に参加し、そしてボクシングを騎士たちに教えた。そして夜になると、ベリルは俺の部屋にちょっと話をしに来ていた。
ベリルには、その日の訓練でどんなことをしたか話していたが、毎晩毎晩その話では飽きるのではと思った。だから俺が元いた世界でやっていたゲームの話、好きだったアニメの話をしてみたところ、ベリルは熱心に話を聞いてくれた。
この世界にはテレビがなかったが、パソコンでゲームが遊べるらしく、ベリルも自身がやったことがあるゲームのことを話してくれた。さらにアニメもパソコンで楽しめるのはもちろん、学校の授業でもアニメが使われており、この国では大人から子供までアニメに親しんでいることが分かった。
訓練以外の話をするようになってから、俺だけじゃなく、ベリルも自分の話をするようになっていた。
ベリルが俺の血を必要としない。
それは今日も一日平和だった、ということでもある。
そして吸血の代わりにちょっと話をしにくるベリル。
異世界での俺の日常が出来上がりつつあった。
◇
そんな日常を過ごすこと一週間。
俺にとっては大きな変化が訪れた。
それは夕食後、暖炉の前のソファに座り、みんながワインを楽しむ時間でのことだった。
「寛いでいるところをすまない。皆に報告したいことがある」
ベリルはそう言うと、ワインが入ったグラスを手に暖炉のそばに立った。
今日のベリルはローズダスト色の落ち着いたドレスを着ていた。ドレスの色は落ち着いていたが、その分ワイン色の髪の美しさが際立っていた。
「私はこの一週間ほど、毎日のように、父親であるロードクロサイトと共に、一日中様々な会議に参加していた。オンラインで行われた会議では、ブノワ及びブルーノ家の今後の処遇を決め、新たに5つの有力ヴァンパイアに迎える家を選出した。そして多くのヴァンパイアから決闘の日以降、問い合わせがあったある件について、答えを出すことになった。それは拓海のことだ」
ベリルの言葉にその場にいた全員が俺のことを見た。
突然自分の名前が出た俺は、目を丸くするしかなかった。
「レッド家における拓海の肩書は、私付きの『特別騎士見習い』だ。実際、拓海は騎士の訓練に励んでいるしな。この件は明日、公にされることになる」
この発表を聞いたみんなは、拍手して喜んでくれた。
「明日の昼前に拓海の騎士叙任式を行う。皆、列席してくれ」
この後、ベリルはブノワの処遇(魔力剥奪、国外追放)、ブルーノ家の処遇(5つの有力ヴァンパイアからの除外。当主交代)、ブルーノ家に代わり5つの有力ヴァンパイアに加わるのはソルト家に決まったことを発表した。
この発表が終わると解散となった。
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