22:夏の日、美少女との出会い
中等部が始まる前の夏、キャノスは家族旅行から帰って来て、残りの日々を図書館で過ごしていた。家には魔法書が多くあったが、その分、魔術書があまりなかった。キャノスは魔術について学びたくて、図書館に通っていたのだ。
本当に子供の頃は、本=魔法書と思っていて、当たり前のように魔法書を読んで過ごしていた。だが学校に通ううちに、誰も魔法書なんて読んでおらず、しかも魔法を使えないことを知った。さらにヴァンパイアと魔法使いのハーフ、なんていう同級生に出会うこともない。
それどころか、自分がハーフであると分かると、相手との間に見えない壁ができたように感じていた。以来、キャノスは自身がハーフであることを、自分から言わなくなる。そして便利だから家では使うが、学校や外では極力魔法を使わず、魔術を使うようにしていた。
その日も魔術書を借り、図書館から出て、家へ帰ろうとしていた。図書館に併設された公園を通り、家へ向かい歩いていたところ……。
「そこの君」
突然、背後から声をかけられた。
「?」と思い、立ち止まったものの、図書館を往復している時に、知り合いにあったことはない。だから自分が呼ばれたのではないと思い、そのまま立ち去ろうとした。
すると。
「君だよ。金髪碧眼の少年」
特徴的に自分と一致すると思い、声の方を振り返った。
そこには誰もが目を引くような美少女がいる。
まずひきつけられたのは、瞳だ。
ルビーのような輝きを放ち、凛として、力強い眼差しをしている。
次に鮮やかなワイン色の髪。
艶があり、夕陽を受け、その髪は燃えるような美しさだ。
そして自分と年齢はそこまで変わらないように見えるのに、チェリーレッドの唇には、大人の女性のような色っぽさがあった。
鼻筋も通っており、この年齢にしては身長もある。
着ているのは学生服。
だがこの美少女が着ていると、ただの学生服さえ一流品に見えてしまう。
そんな気品も感じられた。
普通、そんな美少女に呼び止められたら、胸がときめくはずだ。
でもキャノスは、この頃から女子とはあまり関わりたくないという気持ちが強くなっていた。
キャノスくんはかっこいいから、という理由で頻繁に告白され、でも自分がヴァンパイアと魔法使いのハーフと知ると、これまでが嘘のように自分から離れていく。そんな女子を何人も見てきたから……。
確かにこれまで見てきた少女の中で、比類ない美少女であることは間違いない。
でも、だからどうした?
自分がハーフであると知ったら、この美少女も離れていくはずだ。
そう思い、ため息と共にキャノスは口を開いた。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『本気で自分を必要としてくれている』
『ベリル様に恋をしているも等しい状態』
です。
キャノスとベリルの物語は続く。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






