18:ずっとこうしていよう
ガタンとひと際大きくバスが揺れ、目が覚める。
目を開けた瞬間、ルビー色の瞳と目が合い、いきなりテンションMAXになってしまう。
「おはよう。目覚めたか、拓海? まだ少し早いが」
「おはよう、ベリル。うん、目が覚めた」
昨晩眠りに落ちた時は、ベリルをしっかり抱きしめていた。でも今はちゃんと枕に頭をのせ、掛布団をかけて寝ている。ベリルがちゃんと寝かせてくれたのだろう。
それを有難く思う反面、残念にも感じる。
「そこの窓から、朝陽が昇るのが見えるはずだ。サイレントヴィレッジは方角として西にある。そして今、西に向かい、一直線に走っているからな。そこの窓は丁度、真東になる」
ベリルが起き上がり、後ろの窓にかかるカーテンをずらした。
俺も起き上がり、ベリルの隣に行く。
そして窓から外を見ると。
空の上の方はまだ少し暗い。
でも地上の方は、急速に明るくなり始めている。
その瞬間。
ぶるっと体が震えた。
「拓海、寒いのか?」
「あ、うん。温かい掛布団から急に出ちゃったから」
するとベリルは掛布団をつかみ……。
ふわりと自分と俺の肩にかける。そして俺にピッタリくっつくように身を寄せた。
薔薇の香りが優しく広がり、触れた箇所からベリルの体温が伝わってくる。
温かい……。
肩に腕を回し、ベリルを抱き寄せる。
「昨晩の拓海の首筋への噛みつきは、完璧だった」
!? 確かに最初は牙を立てる真似事をしたけど……。
その後、キスもしたのだが。
「丁度あの位置に、吸血には最適な血管がある。それをあの薄暗さの中で見つけ出すとは。すごいぞ、拓海」
「あ、うん、そうか……」
だからか。だからベリルは「早くお前に血を与えたい」と言ってくれたのか。自分から仕掛けたつもりになっていたけど、単に吸血の練習でもしたと思われてしまった。
そうだとしても。
ぎゅっと抱きしめ合い、眠りにつけたのだ。
大満足だ。
ベリルのサラサラの前髪を持ち上げ、額に顔を近づける。
キスをしようとする。
その動作だけで、もう心臓はバクバクしている。
何より、キスをされると気付き、瞼を閉じてくれるベリルに、胸がときめいてしまう。
ゆっくり額にキスをすると、もう天にも昇る気持ちだ。
「日が昇るまで、ずっとこうしていよう」
ベリルが静かに頷く。
二人で肩を寄せ合い、窓から外の景色を眺める。
ただそれだけなのに、とても心が満たされ、幸せだった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『サイレントヴィレッジへようこそ』
『いよいよ次は自分』
です。
遂に到着!
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






