29:来年から婚活しようかな
「そんなことはない。許可が下りれば拓海もヴァンパイアになれる」
「そうなのですか⁉」
「純血種のヴァンパイアと婚姻関係を持ち、相手のヴァンパイアから血を吸わせてもらえばいい」
ヴァイオレットの言葉に俺はただ驚ていた。
俺もみんなみたいなヴァンパイアになれるのか……。
でも……。
そうなったら俺も人間の血を吸うんだよな……。
「あの、とても初歩的な質問をしてもいいですか?」
「なんだ?」
「その、ヴァンパイアになると人間の血を……」
「ああ、吸血のことか。基本的に我々は普通の食事で栄養補給できるから毎日のように吸血を行っているわけではない。自身の血を失った時に供物として召喚して吸血を行っているだけだ。あと、これは断言できないが、拓海は血を失っても睡眠と食事で失った血の回復ができている。その性質はヴァンパイアになっても変わらないだろうな」
「えっと、そうなると俺ってヴァンパイアになると何が変わるんですかね?」
「少なくとも今より格段に寿命が延びるだろう。そして一定の年齢で成長を止めることができる。ポリアース国の人間は年齢を経るにつれ身体的機能が低下し、容姿も衰えていくが、ヴァンパイアはそれがない。
あとは力が強くなる。力が強くなることで、病とは無縁になる。人間は病気というものにかかるらしいが、ヴァンパイアは病とは無縁だ。あとは牙が生えるとか細かい変化はいろいろあるだろうが……」
「……なるほど。俺にとって願ったり叶ったりのことばかりです。来年から婚活しようかな……」
「その必要はないと思うが」
「え⁉」
「今日、拓海がベリル様を身を挺して助けようとしたことを多くの観衆が見ていた。あの場にいたのは純血種が多い。拓海が婚活せずとも向こうから声がかかるさ」
「俺、そんなにすごいことをしたんですかね……」
ベリル本人から感謝されるのは分かる。
でもキャノスやヴァイオレットからここまで褒められるとは正直意外だった。
「拓海は謙虚だな。本当はロードクロサイト様に褒賞を求めてもいいぐらいなのに」
「そんなに⁉」
「これはまったく恥ずかしい話だが、ベリル様の三騎士である私達が動く前に、拓海、お前は動いていた。ベリル様は防御魔術を展開しようとしていたから、我々三騎士が出遅れたことを気にするなと仰ってくれたが、万が一のことが起きていたら……。そう思うと咄嗟に動いてくれた拓海には感謝の気持ちしかない。レッド家の名誉も守られた」
ヴァイオレットはそう言うとワインの入ったグラスをテーブルに置いて俺を見た。
「拓海、お前と私との出会いは最悪なものだったと思う。私は拓海のことを供物としてしか見ておらず、失礼な言動を沢山したと思う。でもそれは私が間違っていた。拓海、お前はベリル様にとって必要な存在だ。どうかこれからもよろしく楽しむ」
ヴァイオレットはそう言うと頭を下げた。
俺は驚いてヴァイオレットに頭を上げるようお願いした。
「いえ、ヴァイオレットはブルーノ家から俺のことをちゃんと連れ帰ってくれましたし、あそこで起きたことはお互いがよく分からない状態だったので……。正直、俺もヴァイオレットのことが怖いと思っていましたが、今の話でその気持ちは変わりました。だからこちらこそよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げ、顔を上げると、ヴァイオレットが手を差し出していた。
俺はヴァイオレットと力強い握手を交わした。






