5:私に何をしてもいいぞ、拓海
「サイレントヴィレッジには、オックス家という純血の一族がいてな。私達がサイレントヴィレッジに来ると聞いて、ぜひ我が家に滞在してほしい、と連絡がきていた。レッド家の特製スープのように、オックス家と言えば、スペアリブ料理だ。あまりにも美味しいということで、ここメクレンブル(首都)にもオックス家が出店する、スペアリブ料理のレストランがあるぐらいだ。一泊ぐらいお世話になって、様々なスペアリブ料理を堪能させてもらおう」
ベッドに横になった俺は「へぇー」と相槌を打つ。
「拓海は、スペアリブ料理は嫌いか?」
「どうだろう? 多分、元いた世界でも食べたことあると思うけど……。料理名とか気にしないからな。でも好き嫌いはないから。多分、喜んで食べると思う」
「なるほど。スペアリブは豚のバラ肉を使う料理で、下味をつけ、焼いたり、煮込んだり、揚げたりする。しみ込ませる漬け汁で味も大きく変わる。オックス家のスペアリブ料理も、秘伝の漬け汁が美味しさの秘訣と言われている」
ベリルはスペアリブ料理についていろいろ説明してくれているのだが……。
食べるなら俺は断然、ベリルがいい。
相変わらずベリルはピーチタルトみたいだし、そうやってうつ伏せで肘をついた姿勢だと、ネグリジェから谷間も見えるし、距離が近いから甘い香りもするから……。
本当に食べたくなる。
というか。
もう料理の話はいいから、ベリルとイチャイチャしたい……。
いや、どうしてそうスキンシップを求めてしまうのだろう。俺が思春期だから?
でも騎士と言えば、プラトニック・ラブ……。
「拓海、どうした?」
ベリルが俺の頬に伸ばす手をつかみ、はむっとかぶりつく。
「!? スペアリブの話をしていて、お腹が空いてしまったのか、拓海」
拗ねたような上目遣いをしたまま、かぶりつき動かずにいると……。
「どうやら拓海は、私のことをやはり食べたいようだな」
この際、もう頷いてしまおうと思ったら。
「3分間。私に何をしてもいいぞ、拓海」
「えっ!?」
かぶりついていた手から口を離す。
「ただし、私もガードはする。ただ手加減して片手だけだ。しかもこの仰向けの状態で」
「……!」
普段だったら、どうやっても敵わないと思い、そんな無謀な挑戦はしなかっただろう。
でも、今は違う。
料理の話より、イチャイチャしたい熱が高まっていたから……。
俄然やる気になってしまった。
「やる!」
こうして、俺の挑戦が始まった。
◇
無、無理だ……。
片腕と言えど、ベリルは強いし怪力。
しかも手加減は本当に右手を使わないだけで、普通に何度も投げ飛ばされた。
……受け身の特訓、しておいて良かった……。
もう、絶対どこにも触れらない。
諦めかけたその時。
……!
閃いたぞ!
胸ばかり狙うから、すぐに左手で掴みあげられてしまう。
左手が届かない場所。かつ仰向けの状態だから……。
あそこを狙おう!
俺はベッドにのった瞬間、ベリルの右足首をがっつり掴み、脚の上に乗る。
そして……。
思いっきり、右足の裏をくすぐった。
何をしてもいい、と言われた。
でも別に足の裏をくすぐりたいわけではない。
ただ、ここなら手が届かない。そして起き上がれないから、投げ飛ばされることはない。
そう思っただけだ。
それに何としても一本ぐらい取りたい。
そんな気持ちになっていた。
ベリルは身をよじるが、脚に俺が全体重をかけているから、無理な動きができないようだ。ジタバタ動くのを止めた。
俺はここぞとばかりに足の裏をくすぐったが……。
反応がない。
もしかして、ベリル、足の裏はくすぐったくないのか?
そう思い振り返ると……。
……!
ベリルがとんでもなく妖艶になっている!!
自ら使うことを禁じた右手でシーツをぎゅっと掴み、左手の甲を口に押し当てている。頬はチェリー色に染まり、瞳は潤んでいる。必死に声を出すのをこらえているせいで、ツンと上向きのバストが大きく上下している。
な、なんていう破壊力……。
理性が吹き飛びそうになる。
というか、今なら、胸に……!
素早く動いたつもりだった。
だが胸に向けダイブした瞬間に、ベリルは左手で俺の頭をがっつり掴む。
次の瞬間、いとも簡単に転がされてしまった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
エピソード1から応援くださっている方も
心から感謝です。ありがとうございます。
ということで次回更新タイトルは
『……もう、無理……。』
『男のフェロモンが全開』です。
2話公開時は、時間差で2話目を公開します。
ということで早くも新キャラクター登場!
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これからもお楽しみいただけるよう頑張ります!
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






