86:暗躍
こうして『パンドラ』のメンバーは、ブノワが用意した貨物船に乗り込み、上陸の日が近くなるとコンテナに隠れ、そしてあの倉庫にコンテナごと入国した。
ブノワは魔法使いの魔法で声が変わっていたし、髪の色も違っている。
入国に際し、偽の身分証も用意していた。さらにテルギア魔法国との交易品を積んでいると申告することで、必要以上の詮索もされずに済んだ。もちろんコンテナのチェックはされたが、検査をした役人には、一生遊んで暮らせるようなお金を握らせた。元々ブルーノ家の息のかかっている役人だったので、それでうまく丸め込むことができた。
無事入国を果たした日の夜、ブノワはカルロスとナジールに、事の次第をドヤ顔で語った。そしてブノワはカルロスとナジールにこうアドバイスした。
まず『パンドラ』がブラッド国にいることはゼテクを含め、現『ザイド』のメンバーに知られてはならないと。
なぜなら金に目がくらみ、完全にレッド家の忠実な犬になった『ザイド』のメンバーもいる。『パンドラ』がいるとバレれば、襲撃前に叩かれる可能性があると。
その可能性はゼロではない。だからカルロスもナジールも、現『ザイド』のメンバーに接触はとらないことにした。
次に、レッド家は『ザイド』を信頼しきっている。それを利用するといい、というのだ。つまり、レッド家には『ザイド』のフリをして、潜入すればいいと。
レッド家の邸宅には正門以外にも、裏門、東門、西門と出入り口がいくつかある。それぞれの門から分散し、『ザイド』のフリをして何度かにわけ、潜入するというものだ。
レッド家の警備はかなりのものというから、そこを戦闘なしで突破できるなら、それに越したことはない。ブノワの提案にのることにした。
最後にこれは、レッド家を訪問したことがあるブノワだから知っている情報だった。
それは、レイラと魔術の効かない体質……つまり俺がいる建物に関する情報だ。
レッド家の敷地は広大。
敷地内には、レッド家の一族や召使いが暮らす邸宅、離れ、庭園、池、プールなどがあり、さらに沢山の騎士が暮らす建物、厩舎、乗馬場、武器庫、演習場、病院などがあった。それはとんでもない規模だ。
ブルーノ家は、ブラッド国では第二位の地位にあった。そのブルーノ家の敷地が簡単に収まり、かつそれでもまだまだ余裕があるという広さだ。
迷うと時間を無駄にする。
でもブノワは、かつてベリルの婚約者だった時に、レッド家に招かれていた。その際、誰がどのあたりに住んでいるのか、それは誘導尋問で聞きだすことに成功している。
これこそ、カルロスとナジールが欲していた情報なので、有難くその情報を元に動くことにした。
しかし。
ここが誤算だった。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
「誤算」
「まさかこの二人が犯人なんて……」
です。
一体、どんな誤算が……?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






