71:感無量
「拓海」
ベリルが俺の名を呼び、二重の綺麗なルビー色の瞳で俺を見た。
「ベリル!!」
堪らずベッドに駆け寄る。
「拓海」
ベリルが両腕を広げ、俺はそのままベリルを抱きしめた。
この時はもう、感無量だった。
ただただ、ベリルが生きていて、元気になってくれて、抱きしめることができている。
そのことに感動し、胸がいっぱいになっていた。
「ベリルが元気になって良かったよ」
そう言うだけで精一杯だ。
「ああ。ものすごく元気だ。私の体に拓海の血が流れ込んで、全身に力を与えてくれた。かつてないほど気力もみなぎっている。心配をかけたが、もう大丈夫だ」
その言葉を聞いて、本当に安堵し、再び抱きしめる腕に力を込める。
「拓海こそ大丈夫か? 私がこれだけ元気ということは、拓海から沢山の血をもらってしまった気がする」
深呼吸し、気持ちを落ち着かせて答える。
「たっぷり睡眠もとれたし、それに栄養剤を点滴で投与してもらっていた。だから俺は大丈夫だよ」
「そうか。良かった」
ベリルはそう言うと一旦体を離し、少し体をずらした。
「拓海、立ち話はなんだ。こっちに来て」
「!! でもベリル、間もなく朝食だろう?」
「一緒に食べよう。このベッドは大きいから問題ない」
「……え、いいのか? スピネルに怒られないか?」
「からかいはするだろうが、怒ることはない。さあ」
裾をベリルがぐいっと引っ張ると、それは俺がベッドに倒れこむ強さだ。
ベッドにベリルと仲良く横並びになり、枕にもたれた。
「しかし、ベリルが背中に短剣を受けるなんて……。一体何があった?」
「そうだな。まず拓海はブノワに吸血されていないことに、気づいていたか?」
思わず「え!」と驚かずにはいられない。
間違いなく、吸血されたと思ったのに。
「拓海はキャノスの変身魔法で、ダリアという、ブノワが涎を垂らしそうな美女に変身していた。当然、ブノワはダリアに欲情し、手を出し、吸血しようとしたと思うのだが……あっているか?」
ブノワのあのいやらしい手の動き、鼻の下を伸ばした顔を思い出し、げんなりしながら頷いた。
「ブノワは無抵抗なダリアの首筋に牙を立てた。でもそこには思いがけないものがあった」
「思いがけないもの……?」
ベリルが腕を伸ばし、俺の首に触れた。
急に素肌に触れられ、ドキッとしてしまう。
だがよく見るとベリルの手は、『誕生の証』であるシルバーの鎖状のネックレスに触れている。
「このネックレスにはとても強い魔力が込められている。どれぐらい強いかというと……」
「まさか……」
ベリルがルビー色の瞳を細めた。
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