25:めちゃくちゃ警戒されている
帰りの馬車ではレッド家の騎士が俺の隣に座った。
窓から外を見ると、馬車の左右にそれぞれ一名ずつ、騎士の姿があった。
レッド家の騎士は甲冑に紋章の入った緋色のマントをつけている。その中でも精鋭とされる騎士には、紋章が金糸で刺繍されているのだが、今、俺の隣に座る騎士も、外にいる騎士も、その金糸の紋様がマントに見えていた。
三騎士であるヴァイオレット達も当然金糸の紋章のマントをつけていて、見慣れているはずだったのだが……。
なんだか落ち着かない……。
俺が無鉄砲なことをしたから、監視をつけられたのかな。
隣に座る騎士は、ヴァイオレット、キャノス、バーミリオンと違い、まるで私語禁止と命じられていると思うぐらい、何も話さなかった。
馬車に乗る際「ご同乗させていただきます」と言ったきり、だんまりだ。しかも話しかけないでくれオーラも感じる。
俺は仕方なく館に着くまで、窓の外を眺めることにした。
考えてみれば、この異世界に来てから、ブルーノ家の庭は見たが、あとはずっとレッド家の館の中にいた。
街がどんな様子なのか、この際じっくり見てみるか。
決闘場所へ向かう時は、あまりにも美しいベリルの姿が頭から離れず、変な妄想をして過ごしてしまった。だから外の様子をじっくり見るのは、これが初めてとなる。
自分がこれから生きていく世界だ。よく見ておこう。
俺は窓の方に体を向けた。
決闘が行われた場所は街外れだったようで、周囲は森が広がっていた。だがだんだん畑が見えてきて、住宅も見えてきた。牛や馬が草をついばむ姿も見えたし、強烈な匂いで近くに養豚場や養鶏場があることも分かった。
そこを通り過ぎると民家が立ち並び、やがて商店が見えてきて、街の中心を移動していると分かった。
街並みは中世のヨーロッパを思わせるものだった。
歩道を歩くヴァンパイア達の服装も、やはり中世のヨーロッパみたいだ。それでいて電気・水道・ガスなど現代的な設備も整っていて、パソコンや電話もあった。スマホは誰も使っていないので、存在していないようだが、何か別の方法を使っているのかもしれない。
俺がいた世界の、現代と中世がごちゃまぜになったような世界だった。
店を眺めていると、生活に根付いたもの、食料品店や飲食店も多かったが、珍しいお店もいくつか見つけた。魔術関係のアイテムを扱う専門店、魔術に関する書籍を扱う専門店、ライカンスロープ用の耳かき専門点などなどだ。
街の中心部を抜けると、今度は豪邸が立ち並ぶエリアだった。
そしてこのエリアに入ってほどなくして現れるのがレッド家の邸宅だった。街の中心からも近く、そして敷地もとんでもなく広い。レッド家の敷地に入ったがエントランスはまだまだ遠く、俺は庭園の木々や噴水、大理石の彫像を眺めた。
ようやくエントランスに到着し、馬車を降りると、キャノスが俺を出迎えた。
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