65:お触りし放題
「ポリアース国での生活に慣れた頃、とてもユニークな集団に出会えてね。そしてその集団に関するある面白い情報も、ぼくは掴んでいた。さっきのあの女。あの女も、ぼくに惚れ込んでいてね。いくら別れようと言っても、別れてくれなくて。学生の頃からだよ。今も仕方なく付き合っているけど、彼女がいろいろ、ブラッド国での出来事を教えてくれた。そこでぼくは、ある計画を思いついた」
またも薄笑いを浮かべ、ウォルトが俺を見る。
ウォルトは分類すれば、イケメンだと思う。
だが俺は男だ。
こんな笑みを向けられても、キモイだけである。
「ぼくは失った魔力を取り戻したいと思っていた。そのためには、ヴァンパイアから吸血すればいいのだが、見ず知らずのヴァンパイアから吸血して、魔力を奪うのは申し訳ないだろう? ここはぼくを貶めた悪女から奪わなければ意味がないと思った。ただ、その悪女は……まあ、悪女だからね。悪知恵も働くし、しかも富も名声もあり、とんでもなく魅力的な体と美貌を持っている。あの女を屈服させるのは、一筋縄ではいかない。面倒だが、あの女の弱点を押さえ、そしてあの女が、泣いてぼくに吸血を請う状況を作り出す必要があると思った」
思わずため息が出た。
面倒な奴だな、と思った。
なんでそんな回りくどいことをする?
正々堂々正面から、勝負を挑めよ。
同じ男として、情けない奴だと思った。
見てくれはいいのに、残念な奴だ。
「そこで、例のポリアース国で出会ったある集団に協力を仰いで、あの女の弱点を盗み出そうとした。ある集団の方もね、ちょうどその悪女のところに囚われている仲間がいた。その救出も兼ね、ぼく達は手を取り合い、乗り込んだわけだけど……」
ウォルトはそこで初めて、挫折感をにじませる。
だが。
すぐに笑顔に戻る。
なんなのだ、この無駄に前向きな思考は。
「弱点を押さえる必要があったのは、ぼくに魔力が10パーセントしかなかったからだ。でもダリア、君のおかげで間違いなく、ぼくの魔力は回復した。だってあのレッド家からの猛攻を、振り切ることができたのだから。しかも以前より、魔力が強まった気さえした。もうあの悪女の弱点なんて、どうでもいい。この力があれば、あの悪女の家ごと潰してやれる。……本当に君に出会えて、ぼくはラッキーだったよ」
ウォルトは再び手を伸ばし、俺の胸の前の空間を、今度は両手で撫でた。
……ちょっと待ってくれ。
この手の動き、まるで……。
俺はそこで思い出す。
自分では視認できない。しかも触覚もない。
だが、ウォルトには見えている。
俺の変身した体が。ダリアという爆乳の美少女の体が!!
最悪だ。
ウォルトは、俺には見えないダリアの体を、お触りし放題だ。
何せこちらは宙づりに近い状態。なす術もない。
ただ、俺は何も見えないし、感じない。
だから勝手にどんどん興奮するウォルトを、眺めるだけ。
勘弁してくれよと、俺が目をつむっていると……。
「……ダリア、君も気持ちよさそうだね」
はあああああ!? そんなわけないだろうが、ボケ!!
「この姿勢では苦しいだろう。ぼくもこの姿勢では……」
ウォルトはそう言うと、視界から消えた。
……これから俺、どうなるのだ……?
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