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完結●異世界召喚されたら供物だった件~俺、生き残れる?~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【Episode3】俺の貞操大ピンチ編

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61:な、な、な……!!

リマにつねられた腰の辺りは、まだ痛かった。

でも、部屋に入ってきたウォルトの姿を見たら、そんな痛みは吹き飛んだ。


かなりよくなったと聞いている。

だがまだ顔には包帯が巻かれていたし、それ以外の場所にも、怪我の痕が沢山ある。


痛々しい姿だった。


看護師に付き添われたウォルトは、診察室に入ると、そのまますぐに俺の前の丸椅子に座る。フローライトはウォルトのそばに行き、問診を行い、続いてスピネルが俺のことを紹介した。


ウォルトはほとんど声を発さず、頷き、首を振ることしかしない。


「じゃあ、始めましょうか」


スピネルがウォルトの背後に控え、俺はウォルトと向かいあった。


黒髪で碧い瞳のウォルトは、覇気のない顔で俺を見る。


弱々しい。

血も魔力も本当に沢山失ったのだろうと思えた。


「ウォルトさん、大丈夫ですよ。私の血を吸ってみてください」


俺は右手をウォルトに差し出した。

ウォルトは無言で俺の腕を掴むと……。


!!

な、な、な……!!

物凄い勢いだった。

ただただ一方的に、貪るように吸血されている。


枯渇しているからか、魔力の注入はほとんどない。

だがクンツのように牙は大きくないので、痛みはほぼない。

だから魔力の注入がなくても問題はないのだが……。

まるで俺の体から、すべての血を吸い尽くさんとするかのような勢いだ。


魔力を与えられることもなく、血だけをどんどん奪われていく。

本能的に恐怖を感じた。

たまらず左手で右腕をつかみ、引っ込めようとする。


だが、思いがけない力で右腕を押さえつけられた。


「ちょっと、ウォルトさん、もう止めましょうか」


スピネルの目つきが変わり、すぐにウォルトの目を手で覆ったが……。


ウォルトは口を開かず、吸血を続けている。


「スピネル!」


我慢できず叫ぶと、スピネルが白衣のポケットから素早く注射器を取り出す。


そして注射器をウォルトに刺そうとした。


だが。


ウォルトは手でスピネルを突き飛ばした。


フローライトが駆け寄ると、ウォルトは突然立ち上がる。


牙は俺の手首に刺さったままだ。

急な動きにより、手首に激痛が走る。


仕方なくウォルトの動きにあわせ、俺も立ち上がることになった。


すると次の瞬間、ウォルトは信じられない勢いで、フローライトの腹部に蹴りを入れた。


!!

な、女性を蹴るなんて。

瞬時に怒りが沸いた。


動く左手で拳を作り、がら空きの左ボディを狙い、渾身の一撃を加える。


その瞬間、リマがウォルトの足払いをしてくれた。

この同時攻撃が効いて、ウォルトが俺の手首から牙を抜いた。


ボクシングの腕の動きの要領で、素早く右手を引っ込める。


ウォルトが吸血した痕から、血が流れて出ている。


リマは床に倒れたウォルトの喉を圧迫し、気絶させようとしていたのだが……。


ウォルトはさっきまでの弱々しさから一転、リマの腕を掴むと、片腕でだけで軽々とその体を投げ飛ばす。


咄嗟に飛んでくるリマを受け止め、二人でベッドに倒れこんだ。


立ち上がったウォルトが俺とリマの方へ向かってきたが、それをスピネルが羽交い締めで止める。


そこにフローライトが注射器を手に駆け寄ろうとしたが……。


またも蹴りを繰り出そうとした。

だがフローライトは、それを器用に避ける。


しかし次の瞬間、ウォルトは羽交い締めをしていたスピネルの腕を引きはがし、まさかの背負い投げで、フローライトの方へ投げつけた。


リマが起き上がり、曲刀きょくじんを手にウォルトに向かう。


ウォルトは素手のまま、曲刀きょくじんの攻撃を避け、呪文を唱えた。


だがリマは、魔術が効かない体質ノー・ダメージ

そのまま曲刀きょくじんを手に、攻撃を続ける。


何か武器になるものがないか、ベッドの周りを見るが、枕ぐらいしかない。


「ダリア」


本名の「拓海」で呼ばれていれば、即反応できた。

だがダリアの名には、まだ慣れていない。


ダリア?


得意の瞬発力と運動神経の良さを、残念ながら発揮できなかった。


最後に聞いたのはリマの「ダリア」という声。

突然後頭部に激痛を感じ、目の前が暗くなった。

本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!

次回更新タイトルは

「異様な光景」

です。

豹変したウォルト。拓海はどうなる!?


それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。

明日のご来訪もお待ちしています!!

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