24:俺の身に何が起きた⁉
「結局、俺の身に何が起きたんですか?」
「それはこっちが知りたいことよ」
スピネルの言う通りだった。
「でもね、まあ、可能性として考えられることはなくもないわ。拓海くんが着ているそのシャツ、キャノスが魔法で作ったものでしょう。魔法で作った服には防御の魔法が込められていることが多いから、それのおかげで助かった……と言いたいところだけど、ブノワが放った魔力はとんでもなく強力だった。ありったけの力を込めたものだったから。それを防げるほどの魔法はそのシャツには込められていない。となると、拓海くん自身が魔術の効かない体質ということになるのだけど……」
「魔術の効かない体質?」
俺はスピネルを見た。
「そう。ごくごく稀にいるらしいのよ。私はもちろん、これまで会ったことないわ。外交も担うロードクロサイト様でも、おそらく会ったことがないと思うわね。それだけ珍しいというのはもちろん、魔術の効かない体質は、暗殺者になることが多いのよ。暗殺者になってしまうと表舞台から消えてしまうから、さらにレア度があがるの」
「なんで暗殺者に……?」
「魔術が効かなければ魔法使いだって倒すことができるから、暗殺者の組織の中では重宝がられるみたいよ」
「なるほど……」
「ただ、拓海くんの場合は吸血されれば快楽を感じるから、魔力が効かないわけではなさそうなのよね。だから厳密に言えば、魔術が効きにくい体質、になるかしら」
「ということはつまり、ブノワの魔術は直撃したけど、俺の魔術が効きにくい体質と、この制服のシャツに込められた防御の魔法で、無傷で済んだ、と?」
「そうなるわね。それ以外に考えられないもの。それで結果的に拓海くんは助かったわけだけど……」
怖い目でスピネルが俺を見た。
「ベリル様を庇おうとした時点で、向かってくる何かの正体を拓海くんは掴んでいなかったわよね。それは槍や矢などの武器だったかもしれないし、魔術だったかもしれない。はたまた天災で隕石が落ちてきただけかもしれない。ベリル様を助けようとした気持ちは確かに立派よ。でもそれで死んじゃったら元も子もないでしょう? もう今日みたいな無茶は禁止ね」
確かに、あれが槍や矢だったらと思うと、鳥肌が立った。
「今後は気をつけます……それでブノワはどうなったのですか?」
スピネルは「ああ」という顔になり
「その場ですぐ取り押さえられ、身柄を拘束されたわ。今頃警察で事情聴取されていると思う。さすがにあんな場所で魔術を使ったから、ブルーノ家も完全に非を認め、ロードクロサイト様に土下座していたけど……。恐らく5つの有力ヴァンパイアから外されることは間違いないでしょうね」
そこでドアがノックされた。
「スピネル様、ベリルお嬢様より伝言です」
「入って頂戴」
部屋に入ったアレンは一礼してスピネルに告げた。
「諸々片がついたので、帰館の準備をせよとのことです」
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『めちゃくちゃ警戒されている』
『拓海に守られているみたい』
『どうして服を脱がすんだ?』です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています‼






