48:俺の血で助けられるなら
その後も、ドアを開けずに突進しておでこを激突させたり。ベッドで眠る騎士の周りのカーテンを開けようとして、なぜか自身がカーテンに包まれたり。
どうしてそうなる?という不思議な現象を披露しながら、フローライトは昨晩病院に運ばれてきた騎士の様子を紹介してくれる。
このフローライトのドジっ子ぶりは、入院している騎士達を和ませていた。
そう、昨晩運び込まれていた騎士達は、想像以上に元気だ。
ここに来る前は、どれほどの重傷を負っているのかと思ったが、さすがレッド家の精鋭騎士。攻撃だけでなく、防御もしっかりしていたようで、多くの騎士が、俺の血がなくても大丈夫そうな状態だった。
それでも。
大量の出血、魔力の消失をしている騎士が三人いた。
三人は運悪く、魔術の効かない体質で狂殺者からの攻撃を受けてしまった。つまり、防御魔術が通用せず、盾も破壊され、曲刀による猛攻を受けた。もちろん、善処したはずだ。だが、大怪我を負うことになった……。
フローライト達による懸命な治療、ゼテクが提供した魔法発生装置「魔法石」を使い、大きな傷口は塞がっている。血液も召喚でまかなった。でも魔力は……。
三人のうちの二人は、ボクシングの練習にも顔を出しているメンバーだ。
ルチアは赤毛の小柄の女性の騎士。とにかくスピードもあり、小回りもきき、ボクシングに向いているということで、成長を期待していた。
クンツは偉丈夫で、ボクシングよりも柔道が向いていそうな重量タイプ。だがボクシングの練習には、熱心に参加していた。
自分の知っている騎士が、ボロボロになってベッドに横たわっている姿を見ると、心が痛む。
俺の血で助けられるなら、助けたいと思った。
この異世界に、俺がやってきたことには意味があるはず。
しかも俺の血は特殊。
きっと今回のような時のために、俺はベリルによってこの異世界に呼ばれたのだと思う。
「時間をとってくれてありがとう、フローライト。ベリル様にも騎士のみんなの様子、伝えておくわ」
病院の入口に戻って来ると、スピネルはフローライトに感謝の気持ちを伝えた。
「はい。ベリルお嬢様にはよろしくお伝えください。できる治療は既に終わり、あの三人については……。今後は心のケアが必要なのかなと思っています。恐らく、残された魔力では、日常生活で役立てるのが精いっぱいでしょう。騎士を続けるとしても……今の役職では無理でしょうからね」
俺は自分の拳をぎゅっと握りしめた。
「フローライト、ベリルはきっと、何か魔力を回復させる算段を立てると思います。だから諦めないでください。……三人の騎士にも、思いつめないよう、伝えてください。俺も諦めませんから」
フローライトは眩しそうに俺を見る。
「……拓海様は前向きですね。そうです。諦めたらそれでおしまいですよね。ヴァンパイアとしての人生は、これからも続くわけですから。あの三人には、拓海様の言葉、伝えておきますね」
「ぜひそうしてください」
俺達はフローライトに見送られ、病院を後にした。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『拓海のスケベ、変態、エッチ!!』
です。
リマが拓海に大激怒!?
でもそのリマに何やら異変が!?
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
明日のご来訪もお待ちしています!!






