39:大人しくしておこう
バスタブにお湯を貯めている間、カレンは内々の処理について説明してくれた。
「今回の襲撃者は、元『ザイド』のメンバーでした。そして現在の『ザイド』はレッド家の配下にあります。ですから今回の襲撃は、傍から見れば、お家騒動みたいなものです。いくらレッド家とはいえ、この襲撃をブラッド国に対しての脅威とは主張できないのですよ。
もし、『ザイド』がレッド家の配下になく、この襲撃が起きていれば、それは大問題になったでしょう。それこそブラッド国を、『ザイド』は敵に回すことになる。
でも今回の件は公になれば、『暗殺組織を配下におくからこんなことが起きる』『これはレッド家の不手際では? 筆頭という立場でありながら、配下においた組織のコントロールもできないのか』となってしまいます。
要するに、身から出た錆、飼い犬に手を嚙まれる、というわけです。よって今回の襲撃の後始末は、レッド家だけでつける必要がある、ということです」
カレンの説明を聞いた俺は、正直なところ「なんだそんなことか」と思っていた。
逃げた敵もいたようだが、魔術の効かない体質の狂殺者でさえ倒したのだ。それに襲撃した理由も判明している。女神とかあの方とかよく分からない人物が背後にいるようだが、レッド家が本気を出せば、すぐに見つけ出し捕まえることができる。
そんな風に考えていた。
だから。
「レッド家だったら、自分達だけで、今回の件は解決できるだろう?」
「まあ、そうですね。それがレッド家ですからね。大丈夫だと思いますが……」
そこでカレンはピーコックグリーンのジレのポケットから懐中時計を取り出し、時間を確認すると、バスルームへ向かった。
「拓海様、お湯がたまりました。入浴してください。入浴されている間に寝間着を用意しておきますから」
「分かった」
俺は返事をすると、早速バスルームへ向かった。
初めて利用するベリルの部屋のバスルームは、俺の部屋よりうんと広かった。しかも、プールに入る前に浴びるシャワーのようなものが、天井に取り付けられている。
試しにそのシャワーの下に行くと……。
天井に設置されたシャワーから、お湯が一斉に噴出された。
……もしかしてこれって、翼を洗うためのもの?
そんな発見をしながら入浴を終え、寝間着に着替えると、バスルームを出た。
部屋には誰もいない。
ベリルも戻ってきていないし、カレンも寝間着を用意した後は出て行ってしまったようだ。
今頃キャノスは修復で大忙しで、スピネルは負傷した騎士の治療に当たっているのだろう。
俺にできることは何かないか考えてみたが……。
魔力を失った精鋭騎士に血を提供するぐらいしか、できることはない。でもそれは俺が勝手にできることでもなく。
カーネリアンの邸宅から、ここに移ってくる者たちを手伝う。これなら俺でもできるのでは?
そうも考えたが。
ベリルは俺に「カレン、ひとまず拓海のことは私の部屋に連れて行ってくれ。私の部屋はキャノスによる防御魔法も展開されている。拓海を入浴させ、休ませてやってほしい」と言っていた。
この部屋を勝手に出て、何か余計なことに足を突っ込んでは、ベリルに心配をかけてしまう。
大人しくしておこう。
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