21:ケルベロスの反撃
「あは。拓海くん、海がいとも簡単に現れたから、もしかして瞬き一つで海も消せるとか思っていない?」
「え……」
「最強クラスの魔獣を召喚するだけでも魔力をかなり使うの。召喚した後も、それでお終いではないのよ。魔獣は勝手に動いているわけではなく、召喚者の指示に従って動いているの。その指示に従わせるためにも魔力を使うわ。さらに魔獣を出現させているだけでも、魔力はじりじり消費されている。つまり、強い魔獣を召喚して使役する、これだけで相当の魔力を使うことになるの」
そう言われてベリルとブノワを見ると、二人とも観客席に手を振るなどしているが、額には汗が浮いていた。
「ブノワはベリル様から魔力を奪い、ケルベロスを召喚できるとなった時点で、勝ちを確信したと思うの。だからこそ魔力消費も多いケルベロスを迷うことなく召喚した。ケルベロスの武器はその鋭い牙と爪を3体同時に繰り出し、炎の力で相手を焼き尽くすというもの。
それに対抗できるのは、水に関係する魔獣や霊獣。でもケルベロスの火力を抑えられる魔獣や霊獣となると、それは限られてしまうわ。しかもケルベロスに勝てる霊獣や魔獣となると、水中に存在するような霊獣や魔獣がほとんど。到底そんなものは召喚できない、ブノワはそう思ったはずよ。
まさか広場を海で満たすなんて、想像していなかったでしょう。だって広場を海で満たすなんて、最強クラスの魔獣を呼び出すなんてレベルではなく魔力を消費するから。しかも海を一瞬出現させて終わりじゃない。維持しなければならないのよ。海を広場に展開するというのは、それだけすごいことなの。
とはいえ、広場を海で満たしたベリル様が海を消すのは簡単よ。魔力を海に対して使うのを止めれば、一気に海は消えるわ。でもブノワがこの海を消そうと思ったら、とんでもない魔力が必要になる。竜巻を使い海を吸い上げ離れた場所に散らすとか、大量の砂を降らせ埋め立てるとかしないといけない。ケルベロスの使役で手一杯のブノワに、海を消すなんて無理よ」
……なるほど。そういうことなのか。
俺は再び、戦闘が続く広場に目を向けた。
ケルベロスは何度も海中から顔を出し、空気を求め、そしてクラーケンから逃れようとしていたが、すぐに海中へ引き戻されていた。
もうこのままクラーケンの勝ちで終わると思ったが……。
突然、ちぎれた触手が海面に現れた。
一本、二本、三本。
海中に没しながらも、ケルベロスが触手を噛みちぎっているのか⁉
ケルベロスの三体の頭が一斉に海面から現れた。
まさかの展開に観客達からはどよめきが起きた。
クラーケンの頭部の一部と、沢山の触手が海中から現れた瞬間、ケルベロスの三つの頭は一斉に炎を放った。
まさか……!
クラーケンが焼かれる⁉
そう思った瞬間。
ケルベロスの顔を目掛け、墨が放たれた。
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次回更新タイトルは『俺はベリルに抱きついた』他2話です。
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