19:拓海はどう思う?
リマが俺を敵視する点は、この際考えないようにして……。
「俺は単純にベリルの三騎士がバラエティに富むことで、どんな敵でも相手にできそうな気がしている。ヴァイオレットは力も強いし、特に剣術に長けている。キャノスは弓と魔法だろう。そこに曲刀を使えて諜報活動もできて、魔術が効かない体質のリマが加われば、最強だと思う。
俺は三騎士ではないけど、ベリルには血と魔力を提供できるから回復もバッチリ。攻撃(剣と弓と曲刀)、防御(魔法、魔術が効かない体質)、回復(俺の血)。すべて揃う。最強のパーティになれそうだ」
するとスピネルも俺に同意を示した。
「私も拓海くんと同意見ね。多様性は重要よ~。それぞれの得意が異なるから、いざという時に皆の知識やスキルを総動員して動ける点が素晴らしいと思うわ。それに暗殺者は人間で構成されているから、医師顔負けの治療スキルを持っているの。まあ、それだけ生傷がたえない過酷な生き方をしているってことなのだけど。
後は遊牧民みたいに移動しながらの生活が基本だから、野外生活に慣れている。火を起こすなんてものから、星を読んで道なき道を進んだり、動植物にも詳しい。私達にはないスキルを持っているリマは、きっとベリル様にとってプラスになると思うわね」
俺とスピネルの言葉に、ベリルは満足だったようで、笑顔になった。
「私がリマを選んだ理由、それはみんなが言ってくれた通りだ。そしてリマ本人も、私の三騎士になることを快諾してくれた」
「ゼテクもリマが三騎士になることを、良しとしたのか?」
ベリルは俺の言葉に大きく頷く。
「ああ。ゼテクは分かってくれている。私が言葉に出して言ったわけではない。でも私が『ザイド』を、緩やかに暗殺組織ではなく、諜報活動をメインにした組織に変えたと思っていることを。無論、『ザイド』という組織のアイデンティティーを奪うつもりはない。だから暗殺を一切禁止にするつもりはないが、その数はぐっと抑えられていくだろう。その流れを考えても、まだ若いリマが騎士に転向することを、プラスと捉えてくれている」
ベリルはさらにこう付け加えた。
「その証拠にゼテクは、バーミリオンの三騎士にレイラを推薦した。そしてバーミリオンはレイラを自身の三騎士に迎えるつもりだ。残りの二人はレッド家の騎士が選ばれているが」
「レイラも三騎士になるのか!?」
俺を見たベリルは穏やかに微笑む。
「レッド家当主の伴侶ともなると、暗殺の手が伸びることもある。そしてレイラはその暗殺術をすべて知っている。どんな風に要人のそばに、その手が伸ばされるかが分かる。きっと伸ばされた魔の手を、間違いないなくレイラなら、すべて切り落としてくれるだろう」
暗殺組織の『ザイド』のメンバーが二人も、三騎士に選ばれるなんて。驚きだ。
でも類まれなスキルを持つレイラとリマが三騎士に就くことは、大きな意味がある。何よりも暗殺者ではなく、騎士になることは、二人の心に安らぎを与えるはずだ。
が、しかし。
相変わらずリマの俺へのあたりはキツく、特にベリルの婚約者に決まってからは、厳しさが増したが気がする。
『ザイド』のメンバーが暮らす邸宅――本拠地は、ホタルの森の手前のエリアにある。だからテルギア魔法国から帰国して以降、リマやレイラと頻繁に会うわけではない。
だがゼテクの使いでレッド家の邸宅にやってくるリマとレイラの姿を見かけることは、度々あった。それが今後は、毎日のように顔を合わせることになる。騎士の訓練に当然二人は参加するし、住居はレッド家の邸宅内になる。
これから毎日のように「拓海! あんたまたキスマークなんてつけて!」とか「何よ、頬が緩みっぱなしじゃない! どうせベリル様のことでも考えていたのでしょ。集中しなさいよ、集中!」みたいに言われるようになるのか……。
あ、でも!
騎士道精神を学べば、リマも変わるかもしれない。
基本、俺は楽観的に物事を考える。
だからリマの変化に期待することにした。
本日更新分を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
次回更新タイトルは
『ドキドキの訓練初日』
です。
それでは今日もお仕事、勉強、頑張りましょう。
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